魔女と魔女狩りⅢ
―6章―
カラン、カラン
控えめに酒場の扉が開かれた
「…おいおい、ヴィクター。
店の前に俺ぁcloseって立札を立てたはずだが?」
そうマスターがいうと彼、
ヴィクターは私とおそろいのボロボロのマントを脱いで手にかけ直してから
「レイラの声が聞こえてんだ
レイラは入ってよくて俺はダメっことはねぇだろ?マスター?」
ヴィクターはマスターに笑いながら言って
私の隣に座った
「…ま、来るとは思っていたがな。
お前何飲む?」
なんでもいいやと彼はいったのでマスターは
じゃテキトーに持ってくる、といって酒を取るために奥に戻った
マスターがいなくなると静かになった
「…あ~…ヴィクター……
その…昨日は悪かった、な」
とほんのすこし目を逸らして言うと彼は
「いいっていったろ」と優しい声で言った
「…でもマスターが…」と言おうとしていると彼は私の口を手で塞いだ
…あぁ、なんてこいつは優しいのだろう
なんてこいつはこんなに残酷なんだろう…
私は重い口を開いた
「あのな、ヴィクター…
……私は、な」
ん?と彼は言った
彼が言ってからほんの少し、間を開けて
「私は……な」
「うん」
「……やっぱり、なんでもない」
あぁ、やはり私はこいつには言えないんだな
でも、私。
どうせ殺されるのならヴィクターに、
殺されたいな…
いつか私は殺されるから
だって私は…
魔女、なんだから。
だから、せめてできるかぎり彼の近くに。
そして最後は、彼の手で…
大切な仲間の手で、殺されたいなぁ…
……彼は私が“やっぱり、なんでもない”といったことに対して
なんだよ…とか愚痴を言ったから
「秘密だよ。お前には言ってやらない」
私は彼にそう言って悪戯な笑みを向けた
…ごめんね、ヴィクター