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我が名のもとにひれ伏せ、愚民ども!

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「聞け!下々の者どもよ!労働こそが貴様らの特権であり、強いては国の発展こそが、貴様らの至福である!それを肝に銘じ、今日も我が国のために働くのだ。」
 スピーチが終わると、私の眼下に広がる城下の者どもが一斉に歓声を上げ私をたたえる。
 私は手を振りそれにこたえる。
 ああ、私はなんと素晴らしい王様なのだろう。
 私がを治める限り、この国は半永久的に栄え続けるだろう。
 暴動など起きるはずもない、私は万人が認める王なのだから。

 そこで私は目が覚めた。
 ふん、夢か。夢の世界でも私は王なのだな。全くあまりにも高貴な存在というのも時には罪なものだ。
 ちらりと時計を見る。デジタルの時計の数値は7時50分を示していた。
 今日は木曜日か……。平日ということは学校がある。
 走ればまだ間に合うかもしれないが、私は歩いていくから始業の時間には間に合いそうもないな。
 まぁ、良しとしよう。
 きっと皆は笑って許してくれる。なんせ私は王なのだからな。
 私は制服に着替えてリビングに降りた。
 リビングに降りるとテーブルの上にプレーンの食パン一切れと、母上の置手紙が置いてあった。それにはこう記されていた。
「麻へ、あんたが、何度起こしても起きないから、起こすのをあきらめた。食パンでもかじって学校いきな。」
 全く母上はしょうのないお人だ……。
 まぁ下賤の者どもは朝にお菓子ばかり食べて、このようなパンも食べられないのだろう。可哀想なやつらだ。
 私は椅子に座り食パンをプレーンのまま頂くと、鞄を持ち学校へと出かけた。
 
 だが、この中学へ向かう道のり……、なぜ王である私が歩かねばならんのだ。
 普通ならば毎日私の住居に車で迎えに上がるのが常識というものだろう。学校の奴らはどうにも配慮に欠けるな。
 私が優雅に街中を闊歩していると、後ろから誰かの走る音が聞こえてきた。
 私が振り向くと目に映ったのは、クラスメイトの影野 藤花だった。
「なんだ影野ではないか。そんなに慌ててどうしたというのだ?」
 声をかけると藤花は私に気づいたようで一歩後ずさった。
 藤花は毎回私に会うと一歩後ずさる。いい心がけだ。身分の違いをしっかりわきまえているらしい。
「げっ、王朋……。」
「学校に遅刻しそうなのか。しょうのない奴だ。」
「あんたに言われたくないわよ!」
「私はいいのだ。王様だからな。」
「はぁ、あんたと関わってる暇はないの。じゃあね!」
 そうして藤花は足早に学校へと向かっていった。
 貧民も貧民なりに苦労しているのだ。
 それをわかってやってこそ王というもの。
 先ほどの無礼な物言いは勘弁してやろう。私は寛大だからな。
 私はクスリとほほ笑んだ。

 学校につくともう授業が始まっているらしく、廊下は静まり返っていた。この静けさがなんとも心地いい。
 私は教室に辿り着き、そして前からそのドアを開けた。
「やぁ、遅くなった。」
 皆は一瞬、一斉にこちらを向いたが、すぐに机に顔を伏せ、何やら書き物を始めた。
 ふふ、皆もわかっているようだ。下々の者にとって私は頭が高い存在なのだということを。
「王朋君、後で職員室に来なさい。」
 女教師の大竹は私にそういうと何事もなかったかのように授業を再開した。
 来なさいだと?私に命令口調とはこの女、何様のつもりだ?
 ふん、まぁいい。職員室だと言っていたな。そこではっきりどちらが格上なのか思い知らせてやる。
 そして私は席に着いた。
 
 職員室に呼び出された私はそこでこの女の凄まじさを思い知った。
 私が口を開くたびに、それに言葉をかぶせてくる。
 それにどういう事か、私を罵倒するこの女の言っている事が正しいようにも聞こえてくる始末だ。
 反撃の糸口さえも見つからないままに、私は精神的に大きな痛手を負った。
 この女には逆らわない方がいい。私はこの時そう決意した。