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ACT ARME 7 キレイゴト

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XX月XX日  PM 01:36
数時間前に量販店で強盗事件が発生。通報を受け、駆けつけた治安部隊が店舗を取り囲む。
これに対し犯行グループは人質を取り、篭城した。そして出された要求は、奪った金と品を詰め込めるだけの大きさを持った逃走用のトラックを用意すること。この要求に従わない場合は、人質を容赦なく射殺するという非情な通知が告げられた。
現場はまさに、戦々恐々の修羅場と化していた。





「はぁい♪店を占拠なんてやってる強盗団の皆さま。大人しく投降するか、ボコられてから投降するか。今ならどちらか選べるよキャンペーン実施中でぇす。もちろんオススメは、前者の方ね。」
そうルインが言葉を発した時には、9割方強盗団は殲滅されていた。
「な、何なんだよあいつら。たった数人で俺たちを・・・。」
全身を武装している男が怯える。中にはルインのオススメに従って両手を挙げて店を出る者もいた。
だが、そんな状況でも諦めの悪いものはいるもの。だが・・・
「ふ、ふざけるな!周りを囲んで袋に――――   ウガッ。」
残念ながら最後まで言い切ることなく、頭を撃ち抜かれ倒れた。


・・・もう一度言おう。現場はまさに、(強盗団にとって)戦々恐々の修羅場と化していた・・・。


「任務完了!一から十まで余すことなく完璧に遂行できたね!」
シャキーン!と満足げに話すルイン。
「いや、確かに人質も全員無事で成功とは言えるけど、強盗犯の方は全然無事じゃないよね。さっき少し見た限りじゃ顔の原型なくしていた人もいたし・・・。」
ルイン専属のツッコミ役がすっかり板についたレックが、やっぱりツッこむ。
「そんなことをされてしまうような行為に手を染めたあいつらが悪いっ!」
こっちは全くこれっぽっちも一切の反省もないようだ。言っていることは間違っていないような気もしないでもないが、すんなりと受け入れられるようなものでもない。
「行動を起こした以上は必ずリスクが伴う。それを一切顧みない者の末路は、決まって呆気ないものだ。」
ルインの命を狙い、敗れ、その際に一切の抵抗なく死を受け入れようとしていたフォートが言う。
「いやまあ、それはそうかもしれないけど。というか、フォートも一切躊躇せずに強盗犯の頭とか撃っていたよね。」
「あれは暴徒鎮圧用のゴム弾だ。撃ちどころを誤らない限り、死に至らしめることはない。」
さらりと言う。それに便乗し、ルインがさらに調子に乗る。
「そそ。だから何も問題ない。万事うまくいってめでたしめでたしだよ。いや〜、善行をしたあとは気持ちがいいねぇ。」
「何が万事うまくいってめでたしめでたし、だ。ほとんどの強盗団を見る影もない状態にして。少しは加減というもんを知れ。」
浮かれてるルインに、後ろからヒネギム係長が割って入った。
「強盗犯よりも人質の命優先といったのは、係長さんの方でしょうに。それにあいつらを見る影もない状態にしたのは、グロウだよ。僕はあいつらの顎を砕くか、腕の筋を断ったぐらいだし。」
「それでも十二分過ぎると、僕は思うんですけどね。まあ、ヒネギム係長も、ルインさんに委託を決断した段階で予測はしていたのでしょう?」
さらに後ろから、ツェリライが口を挟む。
「まぁな。」
それに対し、係長は軽くため息をついた。
「そう安安とため息を付かないでください。幸せが遠のいてしまいますよ?
これといった計画もなく、ただ店舗に押し入り金品の要求。それなりの人数がいるにもかかわらず、店舗内にいた来客を取り逃がし治安部隊に通報され、苦肉の策で人質を取り籠城。武装もそれを構える姿も実に中途半端。
そのような連中が人質を効果的に使う方法など知るはずもなく、ちょっとした刺激ですぐに人質を手にかける危険性が高かった。ならば僕たちにこの件を委託し、少数精鋭の奇襲で一気に事を終わらせる。確かにギャンブル性は高いですが、決して愚策ではありませんよ。結果的にはうまくいったわけですしね。」
「結果的には、な。また治安病院からクレームが飛んでくるぞ。これは。」
結果が良くても、そのあとを考えなければならない係長の苦労は続く。
「日々のお勤め、お疲れ様です。」
ツェリライは最敬礼をした。
「そう言われると、少し気が軽くなるというものだな。しかし、お前たちは一体なんなんだ?委託した以上、荒っぽいことになることは予測していたが、委託してから七分弱でカタがつくとは予測していなかったぞ。」
呆れと感心の両方が混じった眼差しで見られ、ツェリライは肩をすくめる。
「いつの間にか専門者(スペシャリスト)が揃ってしまいましたからね。
まず僕がQBUを用いて店舗内の様子を把握。そしてハルカさんが店舗内では見えない位置から強力な煙玉を投擲で挿入。犯行グループが混乱したところを、フォートさんが人質をとっている者を優先に狙撃。その間に、ルインさん、グロウさん、カウルさんの三名が特攻を図り目標の殲滅。残りの方たちで人質となった方の保護と脱出を手伝う。
こんなところでしょうか。念のため、想定外の事態が発生した場合のプランも構築していましたが、完全に無用でしたね。」
「スペシャリスト、なあ。あの小さな白コートの男がまさにそのようだが、あれは一体何者だ?」
訝しげな目をする係長。
「まあ、一言で言えばレックさんに続くルインさんの新たな犠牲者といったところでしょうか。」
「・・・件の一切それらしい面影すらなかった削除屋と、何か関わりがあるのか?」
「そのことについては、ルインさん本人にお尋ねください。」
係長の鋭い視線を、ツェリライはひらりとかわし、そのまま立ち去った。
「全く。本当にお前たちは難儀な集団だな。異常なまでに銃の扱いに長けた怪しげな男に、この当たりでは見ることのない出で立ちをした青年と少女。そして・・・」
係長は懐から紙を取り出し、中身を読む。そしてルインたちと話しているレックに目をやった。
「国に故郷を捨てられた家なし子、か。」
その言葉には、これから真に苦労するのは自分ではない。あの優しげな目をした少年であることを憂う思いがあった。


数日後、係長はルインの家を訪れた。
「あれ?どしたの係長さん?もしかして、この前の事件の成功報酬でも持ってきてくれたの?いやぁ、悪いねえ。わざわざ僕ん家まで来てもらっちゃって。」
と、申し訳なさそうに話しながらも図々しく差し出されたルインの手を、割と強めにはたき飛ばす。
「先日の件の報酬は確かに振り込んでおいたはずだ。二重に報酬を要求するとは不届き千万。今日は別件だ。」
「別件?」
赤く腫れ上がった手をフーフー冷ましながら、ルインが問う。
「ああ。新しい仕事の委託だ。」
「へぇ。もう新しい依頼が来たのね。まあ、立ち話もなんだし、玄関口で駄弁れる内容でもなさそうだから、ささ奥に上がって。」
その言葉に、重みが含まれていることを感じたルインは、係長を家の中へと連れ込む。


レックが差し出したコーヒーを飲み一息ついたところで、話を切り出した。
「さて、お前はもう感づいているようだが、今回の委託は絶対に多言無用だ。」
「理由は聞かないほうがいいのかな?」
作品名:ACT ARME 7 キレイゴト 作家名:平内 丈