風のごとく駆け抜けて
12月、ついに都大路が行われる季節がやって来る。
「綾子先生、これって大丈夫なんですか」
「まぁ、日曜だし、ばれなければ大丈夫だろう」
職員室の隣にある会議室。そこには大きなテレビが設置してある。
そのテレビで都大路を観戦しようと言うことになったのだ。
学校側の許可をとらずに……。
「とは言うものの、部活のためですと言えば、問題は無いのだがな」
暖かいコーヒを入れて来た永野先生が、葵先輩に説明をする。
そして始まった都大路。城華大付属は県駅伝とまったく同じオーダーだった。
宮本さんは前半から積極的に先頭集団の前方で走る。
「さぁ、7位の山口代表、城華大付属、宮本。8位の和歌山代表、岡関高校、小宮。ラストまで競り合いながらのタスキリレー。さぁ続々と選手が入って来ます」
宮本さんが7位でタスキを渡すと、城華大付属はそのままの順位でレースを進め、藍子がアンカーで1人を抜かし、6位と言う成績を収めた。
そして、この試合で優勝したのは、えいりんが在籍する鍾愛女子高校。
と言うより、勝負を決めたのが、そのえいりんだった。
「さぁ、これで5人を抜き単独首位に出ました。熊本県代表の鍾愛女子。3区を任された1年生の市島。トラックでは1500mランナーとして活躍しており、スピードには自信があると話していた市島。非常に積極的な走りです」
3区で出場したえいりんんは、6位でタスキを貰うと同時にものすごいペースで飛び出し、ラスト500mの地点でトップに立った。
それで勢いに乗った鍾愛女子は、以後一度もトップを譲ること無く優勝したのだ。ちなみにえいりんは1年生で唯一区間賞を取っていた。
親友でもありライバルでもあるえいりんの活躍は、嬉しくもあり少し悔しい気もした。
作品名:風のごとく駆け抜けて 作家名:毛利 耶麻