風のごとく駆け抜けて
盛り上がれ文化祭!!
DVDを見た次の日、私達は家庭科調理室にいた。
文化祭の模擬店で出す料理は、顧問と家庭科の先生に試食してもらい承諾を得ないと、当日出展出来ない決まりになっている。
ちなみに駅伝部はお好み焼きを作ることになっていた。
わりと誰でも出来るし、多くのお客さんに売るためには、大量に作れる物の方が良いだろうと言う理由からだ。
小、中の調理実習で見て来たが、晴美の料理の腕は当時と変わらずかなりの物だった。
手早く野菜を切り、てきぱきと小麦粉を混ぜ、油を引き、生地を薄く延ばして野菜や肉を盛り、パッとひっくり返し、あっと言う間に完成。
ちなみに、隣が広島県と言うこともあり、広島風で作っている。
さらには、葵先輩も晴美に負け時劣らず、上手かった。
「両親が忙しいから、よく料理はするからね」と、私達に説明しながら、いとも簡単に生地をひっくり返す。
私と久美子先輩、紗耶はどんぐりの背比べ。
晴美と葵先輩に比べるとあきらかに手際が悪かった。
でも、味の方は問題ない。
問題は麻子だ。
まったく料理が出来ない……。
だったら、どれだけ良かったか。
麻子は晴美とほぼ同じくらいの速さで野菜を切り、まったく無駄の無い動きで、晴美以上に綺麗なお好み焼きを焼いてみせた。
これには私達も驚く。
せっかくなので試食をすると……、なぜかとんでも無くまずかった。
そもそも、どうやったらまずいお好み焼きを作れるのだろうか。
変な物を隠し味に入れたのならいざ知らず、調味料などもみんなと同じ物を使っている。
しかも見る限り、麻子と私達で調味料の分量があきらかに違う感じもしなかった。
「麻子、ちょっとこの野菜と肉で野菜炒めを作ってくれないかな」
晴美が残っていた野菜と豚肉を麻子に渡す。
麻子は「それくらい簡単よ」と言い、やはり手慣れた感じで野菜炒めを作る。
それを試食すると、やはりまずい。
「これは……原因がわからないかな」
晴美が野菜炒めを食べ、首を捻る。結局、葵先輩の判断で麻子は売り子専門にされてしまった。
「あと聖香も売り子ね」
葵先輩の一言に私は首を捻る。
なんで私が? 理由がまったく分からない。
「模擬店を出す部活で女子部員がいるところは、1名出すことが決まりなのよね。大丈夫、聖香なら良い線いくと思うわ」
葵先輩は自分のカバンからA4の紙を一枚取り出し、机の上に置く。
その紙を覗き込んだ私は思わず声を上げてしまう。
「ミス桂水開催のお知らせ?」
「そう。けいすい祭初日のメインイベントね。これに出てもらうから、聖香は売り子専門ってことで。その方が途中抜けやすいでしょ」
いやいや、まずはなんで部員の中で私が選ばれたか説明して欲しいのだが。
もちろん、この後具体的な説明もみんなからの反対も無く、私がミスコンに出るのは決定事項となってしまった。
ふと高校名は「かつらみず」なのに、なぜか文化祭は「けいすい」だと言うことを思い出す。
「そうそう。水着審査もあるから、スクール水着も持って来てね。あ、売り子も水着でやって良いから」
葵先輩の一言は、私が考えていたことを一瞬んで消し去るくらいに衝撃だった。
冗談だろうと思いプリントを見ると、本当に「要:スクール水着」と書かれており愕然とする。
うちの学校、なんでこう言うことにはのりのりなんだろうか。
作品名:風のごとく駆け抜けて 作家名:毛利 耶麻