風のごとく駆け抜けて
県高校選手権、またもやあの子と対決
文化祭が終わって一週間後の昼休み。
私は永野先生に呼び出された。
呼び出される理由がまったく見つからず、「いったいどうしたんですか?」と聞くと、一冊の雑誌を渡された。
月刊陸上競技マガジンの10月号だった。
「その付箋を貼ってあるところ見てみろ」
言われて、ページを開くと自分が載っていた。
一瞬ビックリしたが、すぐに3000m障害で高校新を出した時の写真だと気付く。
見開きページの左側に大きく電動計時前で撮った笑顔の写真が。
右側にはレース展開とインタビューでの受け答え、記者の感想が載っていた。
「なんだか恥ずかしいですね。超新星のごとく現れたシンデレラガールって、これ何ですか」
「いや、私に聞かれてもな。まぁ、でも良かったじゃないか。一生の記念だぞ。お前にやろうと思ってさっき学校を抜けて買って来たんだ。持って帰って良いぞ」
「ほんとうですか? ありがとうございます。大切に取っておきます。あ、次に載る時は駅伝部全員で載りたいですね。都大路で優勝とかして」
私にとっては半分冗談のつもりだったのだが。
「そうだな。今年は城華大付属を倒せる最大のチャンスの年だからな。私も色々とオーダーなどを考えてはいるが……」
と、永野先生は真剣に考え込んでいた。
作品名:風のごとく駆け抜けて 作家名:毛利 耶麻