まつり棒
女神はあきれた表情でため息をついた。
「少し放って置いただけで、こうなりまして……」
すまなそうに言い訳したのは、この地区担当の土地神だった。
「掃除はこまめにやらなければいけません!」
女神は諭すように言った。
「お返しする言葉もございません・・・」
土地神はペコペコ頭を下げた。
「まったくゴミだらけじゃないの・・・」
小言を言いながら女神がゴミを一摘みしたところ・・・。
中から、小さな生物が無数に逃げ出した。
「ギャッ!」
女神は思わず悲鳴をあげた。
「これはもうバオベイ(神器)を出すしかありません」
彼女が懐から取り出したのは小さな棒の様なものだった。
「それは何ですか?」
不思議そうに見つめる土地神に対し、
「これは祭雷棒というバオベイ。通称まつり棒です!」
と、女神は胸を張った。
「いいですか、掃除は掃く、洗う、捨てるが基本です」
そう言いながら彼女は手早くまつり棒を動かし、
ゴミと共にうごめく生物を全て掻き出し、
業火の中へ投げ入れた。
「なるほど、アッと言う間に片付きましたね」
土地神がしきりと女神を賛美した。
「さて、お掃除はこれでよし!」
女神は逃げ回っていた一匹をひょいと摘まむと、
それもまた業火(キラウエア火山)の中に放り込んだ。
それから彼女は・・・。
「こちらには木を、こちらには花を咲かせましょう」
と、歌いながら、瞬く間に地表を緑で覆い尽くした。
こうして、全てが終わると、女神は満足そうに頷き、
「これからは、人間がはびこらないよう、しっかりとお掃除するのですよ」
と、土地神に言い残して・・・。
地球を去って行った。
――― おわり ―――
作品名:まつり棒 作家名:おやまのポンポコリン