ロマンチック・エゴイスト
余計なお世話だ。奴の言動、存在のなにもかもが僕の常識の外にある。
「さて、それであんたはわしに何をしてほしいのかな?」
「何をだと?お前が僕に何かできることといえばただ一つ。僕の前からあんたが消えていなくなることだ!」
「ホッホホー!そんな願いでいいのかね?一国の王子ともなると欲がないのー。それとも単にバカなだけかな?」
「うるさい!さっさと消えろ!」
「ホッホホー!あい、わかった!ではさらばじゃ!」
そう言うとオッサンは一瞬にして消えてしまった。そしてそこに転がっていたあの箱もいつの間にか消えていた。
まるで何事もなかったかのように、あたりは静かな闇に包まれた。
僕が寝室のドアを開けると、いつものようにモルソンがそこに立っていた。
「なあ、モルソン。お前はずっとそこにいたのか?」
「はい。それが私の務めですから。」
「何か変わった事が起きなかったか?」
「いえ、物音一つしませんでしたが……、どうかなさいましたか?」
「いや……、ならばよいのだ。私は休むから、誰も中には入れるなよ。」
「かしこまりました。」
そう言って僕は寝室のドアを閉めた。あれは一体なんだったのだろうか?
改めて思い返してみると、あのオッサンは願いなどと言っていたな。まさかあのオッサンは何でも願いをかなえてくれる本物の精霊だったのだろうか?
結果として僕の願いは叶えられた訳だが、もしそれが本当なら……、僕の本当の願いは……。
作品名:ロマンチック・エゴイスト 作家名:野保本