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くそくらえ

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僕がどれほど育ちが悪かったのか、金持ちの家庭に育った人たちがみんなまるで校章のように持ち合わせているおとぼけな価値観に対して、卑屈な悪口をいくら書いてもおそらく多くの人は哀れな顔で見るだろう。そして僕と同じような経験をした人は、きっと僕をお前なんかまだ甘いと言って自分の世界を守るのだろう。

それでもいい。僕もそうだ。
僕は注意欠陥障害(ADD)の患者。細かい事に注意が行かず、何度もアルバイトをクビになり、彼女をナーバスにさせて別れられ、そして僕はうつ病を併発する。

今日でさえ僕は沈むようにしてベッドに体を倒し、枕に顔を押し付けて泣きじゃくる。今年で23になる。この自伝で、僕自身もこれまでの人生を整理したい。そして書き終えたときに何か光が見えていたらと思う。

母親はマスコミ、親父は独立して会社を設立したが営業不振で借金だらけ。そんななか僕は生まれた。バブルの真っ只中、平成の始まり、横浜の田舎で産声をあげた。
生まれてすぐ、僕は保育園に預けられた。親は両働きだし忙しかったから。
小さい頃は極めて元気がある子でもなかったが、暗い子でもなかったと思う。一個下の友だち青木陽介くんは僕をよくいじめて泣かしたけど、同年代の友だちとは問題なく遊んでいた。青木くんはすぐお迎えが来るし、保母さんたちも彼をマークしてたのでそこまで苦しいと思ってはいなかった。友だちとはあやとりをしたりテラスで駒を回したりして遊んでいた。しかしお母さんがお迎えにくればみんな遊んでいたときの三倍は笑顔になってスキップで園の門に向かって行く。僕はバイバイと言って手を振る。門の外で友だちが手を振り返してくれるのを期待して見つめても彼らは冷酷なほどにこちらを気にしない。
そして僕はひとりぼっちになる。各部屋の電気は消され、保育園は真っ暗になり事務室だけが点灯している。これを合図に僕は事務室に入り、保母さんの一人桃井先生のお家に連れられることになるのだ。
先生のお家には大きなゴールデンレトリバーがいる。僕が入るといつも吠える犬だ。そして僕の服を咥えたり顔をペロペロと舐めてくる。(冬場にはコートのファーをしゃぶられてびちょびちょにされたので僕は大泣きしたことさえあった。)
桃井先生のお家に行くのは楽しみなことではなかった。
22時頃になると母親が家のチャイムを鳴らして僕を迎えにくる。
僕にもお迎えがあるのだ。帰る家がある。ただ、迎えに来てくれたときの他の園児に見せつける優越感がないだけなんだ。
作品名:くそくらえ 作家名:東崎 雨也