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義父はみかん農家で、その為に膝を壊した。
みかんの味は農家の腕次第なのか、土地次第なのか、運なのか分からないが、確かに以前貰った時は旨かった。
膝を壊しても尚、みかんの栽培に精を出す事に義父の意地と誇りがこんな私でも感じられた。

義父はみかんどころか農業に知識も興味も皆無な私に農業の話を続けた。
はちみつ農家と提携し、みかんのはちみつを作る。
或いは、気候を利用しみかんの季節でない時はオリーブの栽培をする。
等、多少の野心も交じった、その活力に満ちた(少なくとも私よりは)話し方に、
アルカイックスマイルを浮かべながら言葉の羅列に呼応した形で体ごと揺れる事しか出来なかった。

仮にこれが自分の親だったらきっと辟易の表情、更に嘘の便意等で誤魔化し席を外すのだが、
私どころか妻(つまり彼の娘)、義母、義妹、その場にいた全員が肉親にも拘らず微笑みながら義父の話を聞いている。
新幹線で3時間かけてやって来た、私に出されたお茶はもう僅かしか無いのに。

22時を知らせる時計の音が鳴り、義母は漸く風呂の支度を始めた。
空間の空気の流れに変化が起こる事で私はどうにか息をする事が出来た気がした。
暫くして義妹も自室に戻り、私達夫婦も用意された部屋へ向かった。

風呂から上がり、仏間を通って縁側へ出ると涼しく、恐らく海風と思われるふわっとした風が通り過ぎた。
風にこれといった匂いは無かった。
他人の家の匂いはいつも少しの恍惚と憂鬱を覚えさせる。

妻も風呂から戻り、私達は別の布団で寝た。
布団で隔たれた私達は、それでも夫婦であるし、だからこそ夫婦だった。
一緒に居る事が幸福であったり不服であったり、
それをベクトルで表そうとしてももうそれは排水溝に勝手に流れて行ってしまって形として表現出来ない、
それを端的に表しているのが各々の布団であり、布団の間の距離なのだ。
という事をメビウスの輪状に考えながら私は寝入った。

網戸にして窓を開けていたら寒かったのか、私は尿意で夜中に目覚めた。
用を足し、便所から出ると義妹が立っていた。
驚いて少し見つめあった。
義妹の目が思いつめているのを察し、私は義妹の手を無理矢理引き、義妹の部屋に入った。
彼女をそのままベッドに押し倒し、荒っぽく脱がせた。
彼女は涙も喘ぎ声も漏らさず私に犯された。
吐息はそれなりに荒く、私は彼女に嫌悪と不浄を覚えた。
私はなるべく奥で、なるべく妊娠するように、たっぷりと射精した。

部屋から出ると射精で紅潮した頬を風が撫で、促されるが如く家の外に出た。
風に少し緑の匂いが混じった。
少し歩くと景色が開け、海が見えた。
水平線の向こう側は都会で空が明るい。

夜景を綺麗だと言うのは無粋だろうか。
無垢な愛情を無知なだけだと言うのは無粋だろうか。

翌朝、朝食を全員で机を囲んで食べた。
ふと、妻と目が合った。
妻は、私に向かって微笑んだ。
私は少し妻を見つめた。
出会った頃の妻を思い出した。
私は微笑み返した。
全員、死ねばいいと思った。
作品名:7 作家名:竹包奥歯