Savior 第一部 救世主と魔女Ⅲ
「君は悪魔を滅ぼすんだろう? なら俺はそれを手伝おうと思う」
「・・・・・・はあ?」
リゼはそう言って怪訝そうな顔をした。
「何それ。何のつもり?」
「何のつもりと言われても・・・悪魔を滅ぼすことができれば悪魔に取り憑かれることもなくなるだろう。悪魔に苦しむ全ての人を救うことができるなら、俺はそうしたい。それに君が悪魔を滅ぼしたら、君が魔女ではないという証明にもなる。それには証人が必要だ」
「・・・あなたが証人になっても教会は納得しないわよ」
「でもいないよりは良いだろう」
そう言っても、リゼは表情を変えない。あの射抜くような目でアルベルトを見ている。
「私は別に手助けなんていらない。これは私の、復讐のためにやっていることよ。他人を巻き込む気も関わらせる気もないわ」
彼女はそう頑なに言った。どうやら納得してはくれないようだ。
「なら、勝手に手伝わせてもらうしかないな」
「馬鹿なこと言わないでくれる」
「悪いけど、俺は本気だよ」
アルベルトは真剣だったが、リゼは不機嫌そうな表情を変えなかった。しかししばらくすると、彼女はため息をついて、
「勝手にすれば」
と言い捨てた。その様子に少し申し訳ない気持ちになったが、アルベルトは諦める気はなかった。
誤解を解いてアルヴィアに戻れる方法を見つけるために、ミガーで何をするのか。何ができるのか。正直言って良い手は思いつかない。しかし、少なくとも誤解を解くためには教会に彼女の能力を認めさせることが必要なのだ。そのためには証明となるものを集める必要がある。
それと、もう一つ。
たった一人で悪魔を祓う彼女の力。あの力の正体が分かれば、悪魔祓いに役立てることができるかもしれない。一人で悪魔が祓えるようになれば、たくさんの悪魔憑きを救うことができるし、目の前の人を救えないことに歯噛みする必要もなくなるかもしれない。リゼ一人に悪魔祓いを押し付けなくてよくなるかもしれないのだ。
もちろんリゼの力がアルベルトも扱えるようなものなのかは分からない。むしろ彼女だけの先天的な力である可能性の方が高い。でも、調べてみなければわからない。
ティリーと同じなのだ。彼女が何者なのか知りたい。それが、何らかの糸口にはなるのではないか。そんな気がして。
このことを知ったら、彼女は嫌がるんだろうなと思いながら。
作品名:Savior 第一部 救世主と魔女Ⅲ 作家名:紫苑