理解
お前に何がわかる。
彼はそう言い残して死んだ。
それはそうだ、私には彼のことなど何もわからない。
でもそれは当然ではないか。
彼自身、自分のことがわかっていないではないか。
自分にもわからないことが他人にわかるものか。
私も私のことがわからない。
だれも自分のことなどわからないのだ。
わかっていると言うような人は、わかったふりをしているだけなのだ。
わかっている気でいるだけなのだ。
それはそれで幸せなのかもしれない。
でも私はそのような愚者になりたくはない。
自分のことをわかったような気になり、
他人をはねつけ、殻にこもったふりをする。そして死ぬ。
それはそれで幸せなんだろうが、私はそうはならないのだ。
いや、なれないのだ。なぜか、それはわからない。
自分のことがわからない私にわかるものか。