カミナリを狩る少年
外套の襟を立て大きなポケットに手を突っ込み、白い息を吐く。微かに覗く月の明かりを受けて光る雪の上に跡をつけながら、少年は森へ向かう。
森は暗い。
少年は外套の下から、首にかけたペンダントを取り出した。銀の鎖の先に、銀の枠のついた硝子の匣。中には白の淡い光。
少年は立方体の光を頼りに、森を進む。
やがて視界がひらけ、そこは森に囲まれた湖のような広大な雪原。
少年は森の出口で立ち止まり、木の影に身を潜めた。光の立方体を胸元へ仕舞い、背中から銀の弓を降ろす。
低く長く、雷鳴が轟いた。
少年は木の影からそうっと雪原を見る。雪原の中央には、雪を纏った一本の背の高い木。
少年はその木からまっすぐ上に視線を上げた。
不穏な雲がたちこめ、渦を巻いている。
少年は背中の矢筒から矢を取りだし、弓を構えた。静寂。
瞬間、空が光る。
少年の手が矢から離れるのはそれと同時だった。
間髪入れず背から矢をもう一本。
光る。
光る。
光る。
雷鳴は鳴らない。
少年が弓を構えたまま沈黙を守る中、静かに風が吹き雲が流れ、やがて月明かりが雪原を照らした。
少年は弓を下ろし白く長い息を吐く。
矢を収め弓を背負い、雪原を突っ切りまっすぐに中央の木に向かって歩く。
そのうちに木の周囲に発光する物体が見えてくる。
少年は木の周囲をぐるりと歩きながらそれを回収する。
それは、銀の矢に貫かれた雷の心臓。
枝のように細長い、ひとの腕ほどの長さの心臓から矢を引き抜き、少年はそれを脇に抱える。
少年は全部で4つの雷の心臓をその脇に抱え、月明かりの雪原を後にした。