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超絶勇者ブレイブマン その5

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 終業のベルが鳴り響く。今日の授業はこれで終わりだ。帰宅部の愛と希望は帰ろうとしているが、剣道部の勇気と演劇部の可恋は部活に向かおうとしていた。
 その前に、日直の可恋は黒板を綺麗にして、クラスのゴミを収拾場へ捨てに行く役目もある。以前はこの滝登中学校にも焼却炉があったが、平成11年にダイオキシン類対策特別措置法が施行されたときに撤去された。これも時代の流れによってなくなったものの一つである。
 部活の準備をする勇気と可恋を尻目に、愛は大きく伸びをした。
「さてと、私はもう帰るよ。勇気くん、可恋ちゃん、部活頑張ってね」
「今日もうちの道場には来るよね?」
「もちろん! おばさまの晩御飯食べて待ってるよ」
「いや、自分ちで食べなよ……。何? 両親と仲悪いの?」
 そんなやり取りのあと、勇気は剣道部に向かった。剣道部の活動は校内の武道場で行なうが、水曜日だけは武道場の半分は空手部の活動場所となる。剣道部の活動曜日は月・水・木で、空手部の活動曜日は火・水・金だからだ。
 また、余談だが、体育館では主にバスケ部が活動をしている。希望は女の子にモテたいという理由で、入学してから最初の3ヶ月ほどはバスケ部に所属していたが、練習がつらかったらしく辞めてしまった。それ以来、部活はもうこりごりなようだ。
 今日は木曜日。武道場には空手部はいないので武道場は剣道部の貸し切り状態である。これも余談だが、滝登中学校には何故か柔道部がない。まあ、部活動にも流行り廃りはあるもので、もし柔道がまた人気になれば復活するかもしれない。
 武道場で竹刀を振るう勇気。対戦相手は3年生の先輩だった。勇気たちの年齢ならば、1歳の差でも体格差は大きいのだが、圧倒するのはいつも勇気の方であった。
「勝ちにはこだわらず、自分を磨くために剣道をやっている」と勇気は語るが、言葉とは裏腹に圧倒的に強い。部活の先輩たちでも勇気には太刀打ちできない。しかし、さすがに顧問の先生からはまぐれ当たりで一本取るくらいが関の山だ。
 小一時間ほどして部活も終わり、勇気も帰り支度を始めた。このあと、自宅の道場で空手をしなければならないのだから大変なはずなのだが、勇気はつらそうな表情を見せたことはなかった。ただ純粋に今の生活を楽しんでいるのだ。
 帰り道の途中、勇気は電柱の影に誰かが座り込んでいるのを見つけた。
「にゃー? お腹空いてるのかニャ? ごめんね、今は何も持ってないのニャ。うちに帰れば、乾パンと牛乳くらいはあるけど……。うちでは飼ってあげられないけど、一旦うちに来るかニャ?」
 そこでようやく、猫語で話す少女の背中が見慣れたものであることに勇気は気付いた。更によく見れば、彼女の目の前には上辺が開いているダンボール箱があった。捨て猫でもいるのだろうかと思いつつ、勇気は声をかけた。
「愛ちゃん?」
「ニャッ!? ……じゃなくて、勇気くん!? あはははは、今の見てたんだ……」と照れ笑いを浮かべる愛。いつもあれだけにゃーにゃー言ってるのに、猫語で話しかけてる姿を見られるのは恥ずかしかったらしい。セーラー服ではなく私服になっているので、どうやら一旦帰宅して緋色道場に向かう途中だったようだ。
「あ、やっぱりダンボールの中に猫がいる。『拾ってください』とか張り紙ないけど、野良猫じゃなくて捨て猫かな?」
「捨て猫だよ、絶対! ダンボールの中に毛布まで敷いてあるもん。……こんな気遣いができるのに、どうして捨てちゃうのかなあ」
「まあ、生き物を飼うのって難しいから仕方ないってこともあるよ、愛ちゃん」
「それは分かるけど……、うちだってお父さんが猫アレルギーだから絶対飼えないし……。でも、一度飼い始めたからには責任持たなきゃ! ねえ、勇気くん。勇気くんの家は、……お爺さまがうるさそうだね。やっぱり他を当たるよ」
「いやいや、待ってよ。別にうちのお祖父さまは規律さえ守れば許してくれると思うよ。だから、何か条件は付けてくるかもしれないけど、うちでは飼えないってことはないよ」
「ううん、やっぱりいいよ。勇気くんに迷惑掛けられないもん。明日、学校で可恋ちゃんに頼んでみる。ほら、可恋ちゃんちって前に猫飼ってたでしょ? だから、なんの問題もないと思うんだ。
 ということで、今日のところは一旦連れて帰るよ。一日くらいなら私の部屋に閉じ込めておけばいいし、今から可恋ちゃんの家に行くのも夜遅くになるから失礼かなって思うし。あ、それにキャットフードとか買いに行きたいから、今日は道場休むね。
 そういうことで、貴様の息の根を止めるのは明日にするニャ。またね、勇気くん」
 一方的に捲くし立てて、愛は猫をダンボールごと持って駆けていった。愛は一度自分でこうだと決めたら、周りの意見が耳に入らなくなる傾向があった。暴走気味ではあるが、それは一途で純粋なことを意味する。ともかく勇気は落ち着いて話をするのは明日にするしかないと思うのであった。