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おやまのポンポコリン
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謎の店・Jennyanydots(ジェニエニドッツ)

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【謎の店・Jennyanydots(ジェニエニドッツ)】

 栗之皮商店街は県中央部のJR駅近くにあって、周辺の人口も多いのだが、さびれている。
 日本の商店街の多くが抱えている店主の高齢化と、大型店舗の進出による客離れがここでも起きているのだ。
 通りを行けばシャッターを閉めたままの店舗が目立ち、開いている店もまた活気がなかった。

 そんな中、通りの端に「Jennyanydots(ジェニエニドッツ)」という風変わりな店が目に入った。
 元々は紳士服を扱っていたという地味な店が今ではストリートアートで飾られた派手な店構えになっており、扱っている商品は輸入物の雑貨や古着のようだった。


「実はある店を調査して欲しいのです」
 数日前、裏通りの雑居ビルでしがない探偵事務所をやっている俺のもとに、初老の男が訪れた。

 彼は栗之皮商店街・会長で、“シャッター通り”というありがたくない汚名を返上する為に、日夜商店街の振興に汗を流しているそうだ。

 商店街の空き店舗で、新しく開業してくれる人を探していた処、昨年「アミィーゴ・フェーレス」という団体がリサイクルショップをやりたいと言ってきたので許可をした。

 ところが、できあがった店、Jennyanydots(ジェニエニドッツ)は一応商品を置いているものの、殆ど客がついておらず、商売が成り立っているとは思えない。
 にも関わらず店員と称する人が入れ代わり立ち代り、夜遅くまで出入りしているようなのだ。

「もしや怪しげな宗教団体か過激派のアジトではと町の人達が心配しているのです」

 つまり会長は商店街の人達の心配を解消する為、Jennyanydotsの内情を探ってくれるように依頼してきたのだった。

 俺はアルバイトの助手にインターネットで「アミィーゴ・フェーレス」を探らせる傍ら、自らその活動内容を探る為、愛用の一眼レフを手に現地に飛んだ。

 観光地以外の地方都市で情報を集めるには、それなりの準備が必要だ。
 誰が観ても怪しくないことが重要で、海の近くであれば釣客の姿をし、山の近くではハイカーの姿をする。
 遊園地へは子供を借りて行くこともあるが、その子がよそよそしく振る舞うとかえって怪しまれることになる。

 では海でも山でも行楽地でもない街中では?

 実は、その時に役立つのがブログなのだ。
 俺は人に怪しまれた時は野良猫ブログの為に撮った写真を見せ、安心させている。
 今回も元気な野良猫写真を撮るふりをして数日間、朝から晩までJennyanydotsを見張っていた事で彼らの実態が見えてきた。

 売上が殆どなくても良い理由。
 店員が入れ代わり立ち代わり現れる理由。
 誰が見ても下手くそな変装をしている理由。

「アミィーゴ・フェーレスは秘密結社ですが、メンバーは殆どその周辺に住む主婦ですよ」
 アルバイトの助手が笑いながら連絡をしてきた。
 俺は調査を終え、報告書を商店会長の元に届けた。

「大丈夫です。彼らはおかしな宗教団体でも過激派のセクトでもありません。商売はどうやら趣味の為のもので、懸念されるようなことではありません」
 俺はまだ少し納得しかねている様子の会長に、そう断言して安心させ、その足でJennyanydotsに向かい、アミィーゴ・フェーレスのメンバーになった。


 秘密結社・アミィーゴ・フェーレス(猫友達)の活動とは、地方条例で禁止されている野良猫への給餌や糞取り。病気の猫を病院に連れて行くなどの世話を極秘で行うことだったのだ。

 どうりでこの街の野良猫たちが元気だったわけだ。


    (おしまい)