はじめの一歩
「の~りちゃん」
ママが呼んでる。
「のりちゃん、これ見て。」
お仏壇のママの写真の前に
真っ赤な薔薇が飾られてる。
「すごいじゃない。ママ、これどうしたの?」
そっか!
確か今日は
ママの月命日だったっけ。。。
「さっきね…あの人が飾ってくれたのよ。
ママが薔薇の花が好きだからって。
花を飾りながら
ママにこういったわ。
“わたしは子供を産んだことがないから
母親にはなれないのかしら…”って。
なんだかね、ママ…
あの人がかわいそうになっちゃって。。。」
ママの写真から
眉間のしわが消えてた。
「ママはのりちゃんの本当のママだから
そんなこと考えたことなかったもの。
それに知らなかったんだけど
パパねお肉よりお魚の方が好きなんだって!」
知らなかったのはママだけだよ。くすくす…
「ねぇ、のりちゃん。
そろそろ終わりにしない?
お弁当食べてあげなさいよ。」
なにいってんのよ!
相変わらずいい加減なんだから~。
それにいまさら…・。
「ママもいい加減成仏しないと
本当に天国に行けなくなっちゃうわん。」
ずうずうしいなぁ…
行けるつもりでいるんだ^^;
「のりちゃん。あの人いい人かもしれないわね。
ママは死んでしまったから
もうのりちゃんやパパのお世話は
できなくなっちゃったけど
あの人ならきっと
一生懸命やってくれそう…・。」
お言葉ですがママ
生きてるときも
お世話してくれたことなかったじゃん。
「でもママ、いまさらどうやって
あの人と仲良くしたらいいの?」
「そうね、はじめの一歩が肝心ね。
それにやっぱり“ママ”って呼んでほしくないわ。
ママはママなんだもの。」
「もう! それじゃどうすればいいのさ!」
「いいことばがあるのよ。
ちょっと耳を貸してごらんなさい。」
あたしは耳を冷たい写真に押し当てた。
「なるほど…できるかしら。。。」
「だいじょうぶ♪ できるわよ。
さて、ママはちょっと天国まで行ってくるわ。
ねぇ、天国ってどんなところかしらねぇ。
わくわくしちゃう!
お盆には帰ってくるからね。
その時にまた逢いましょう。じゃ~ねぇ~♪」
お気楽なあたしのママ。
でも安心して。
そんなママも
きらいじゃないからさ。
天国でも派手な服きて
ホッホッホッって
高笑いしてんだろうなぁw