夢と少女と旅日記 第2話-5
「あなた馬鹿なの!? どうせ今はたいしたお給料もあげられてないんでしょ!? それでもメシティカさんはあなたの傍を離れようとしなかった! なんでか分かりますか!? それはあなたのことが本当に心配だから! それ以外に一体なんの理由があるって言うんですか!
そんなメシティカさんのことを、言うにこと欠いて友達じゃない!? 馬鹿馬鹿馬鹿ッ!! あなたの方こそ、メシティカさんのことを“使用人のメシティカ”としてしか見てないじゃないですか! どうして“大切な友達のメシティカ”として見てあげられないんですか! そんなんだから、あなたは他に本当の友達を作れなかったんじゃないの!?
そりゃお金持ちじゃなくなったからって離れていった人たちも酷いですよ。だけど、あなたにだって明白な問題があるわ! まずはそれを認めなさい。そして、メシティカさんの想いをちゃんと受け止めてあげて! それはあなたの義務よ、逃げんじゃないわよ! 一人で勝手にいい気分になって、大切な友達を傷つけるんじゃないわ!!」
――怒りのあまり、少し語気が強くなり過ぎてしまいました。そこは少し反省してます。だけど、気付いて欲しかった。メシティカさんの想いに。きっとメシティカさんは私が夢の世界にいる間もずっとティアナさんのことを心配してたんです。
「お嬢様……」
メシティカさんが口を開きました。
「私もちゃんと自分で想いを伝えるべきだったかもしれません……。ネルさんの言う通り、私はずっとあなたのことが心配だったんです……。友達から見放されて一人で膝を抱えるあなたのことも、夢の世界に囚われてしまったあなたのことも……。この感情は作りものなんかじゃありません……。私の本当の想いです……」
「メシティカ……、私は……、間違っていたの……? あなたの想いを蔑ろにして、一人で勝手に思い悩んで……。ごめんなさい、メシティカ……。私はなんて馬鹿だったのかしら……」
私はふぅと溜息をつきました。呆れたわけじゃないです。それは安堵の溜息でした。
「それに気付けたなら、それでいいですよ。気付けたなら、まだやり直せます。現実をちゃんと受け止めて、まっすぐ前を向いて生きていくことができますよ」
そこで何かの糸が切れたのか、ティアナさんはわあっと泣き出しました。感情の読みづらいメシティカさんも心なしか涙を浮かべているように見えました。
……エメラルドさん、あなたはなんで号泣してるんですか。まあ、別にいいですけど。ティアナさんが前を向いてくれたなら、それでいいんです。ともかく、これにて第二の事件も一件落着したのでした。
作品名:夢と少女と旅日記 第2話-5 作家名:タチバナ