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「図書館なら、調べたいことも お任せでしょ」
「そりゃそうだけど」
「一度、来たかったの。一緒に……」
キミが、俯いてそんなことを言うから ボクの足は迷うことをせずに 図書館の入り口に向かった。

そんなボクとキミの間を モンシロチョウが ヒラヒラと大きな木の方から飛んで来た。
まるで 道案内でもしてくれているかのように建物の方へ向かっていった。
「ヒラヒラ 私たちも ひらひらってね」
キミが、ボクの手を取って入り口までの三段ほどの階段を上がる。
ボクの靴からは、どたどたと音が聞こえるのに キミの足取りは、まるで蝶のようにふんわり上がっている。
そよ吹く風に 揺れるキミのスカートが、そうさせているように思えた。

「あれ? あのちょうちょ……ねえ 窓から入っていちゃった」
「まさか、そんなことないでしょ」
「ううん、そう見えたモンシロチョウ」
キミの駄洒落も 笑顔も ボクには幸せな気持ちにさせるパヒュームのように香る。
香る?
そうだ。ずっと感じていた心地良さに混じって、ボクを惹きつけるこの香りはキミのものなのだね。

ほんの少し大人になりかけたキミが、ボクの傍で笑っている。
柔らかな陽射しの中で、そよ風の吹くたび、キミの黒髪とスカートが揺れる。 
ボクの想像は広がりを感じる。
このまま、何かが浮かびそうな気がしてきた。

蝶のように 自由で可愛いキミがいる。 
ただそれだけなのに……。


     ― 了 ―
作品名: 作家名:甜茶