のーぶらじゃないとおもわれているかもしれない
その一言が言えない。
皆に言いたい。
「僕はブラを着けていません」
と
大きな声で言いたい……でも、その勇気が無い。
「わざわざそんな事を言うってことは、少なくとも以前は着けてたんじゃないの ?」
そー思われそうで怖い。
でも、僕は断じてブラを着けていない。着けた経験も勿論ない!だからこそはっきりと、「ノーブラ宣言」をしたいのだ。
*****
昨日、彼女と久しぶりに会った。コーヒーを飲みながら。
「あのさぁ……俺……実は……」
「なに?」
「いや……何でもないよ」
やっぱり言えなかった。
本当は――
「俺……お前と付き合う前からずっとノーブラだったんだ」
って言ってやりたかったのだが……
*****
疑心暗鬼に歯止めが掛からない――ひょっとして皆、僕がブラを着けているとでも思ってるんじゃないだろうか?
そう考えるとやはり早めに、「ノーブラ宣言」したほうがいいのでなかろうか……と思う。
最近、母親に言われる。
「お前もいい年なんだから、いつまでも正職に付かずに、ブラブラしてるんじゃないわよ」
ドキッとする。
ブラブラはしている……でもブラはしていない――ちなみに……母は、ブラをしているだろう……
僕は……寄せてあげたりなんかしていない!
これはナチュラルな胸だ。決して世間に対して過剰に胸をアピールしようというつもりはない。
しかし誤解しないでほしい。
ブラをしていないのは――
「私はノーブラである」
という自己表現のためではない!
ブラをしていない男というブランドを守ろうとしているわけでもない。
セシールの商品を買ったことはない。
いや……一度ある。
でも誤解しないで!彼女へのプレゼントで買ったんだ。
買う時はすごく緊張した。
「あのぅ……コレ僕のじゃないですから」
店員さんにそう言いたかった……でも言えなかった……言わなく正解だったと、今は思っている……
もうかれこれ数年――
こうして、ブラのことで思い悩んでいる。
ブラのことばかり考えている。
(何かいい方法は無いだろうか?)
世間に対して、「僕はブラをつけていません」ということを、変な誤解を招くことなく、ハッキリ且つさり気なく、カミングアウトできるいい方法は……
いっそ常に胸をはだけて露出させておけば……
い、いや……ダメだダメだ!
そんな事をしたら、露骨狂だと思われてしまう……僕は変態扱いだけは絶対にされたくない。
逆転の発想――
いっその事ブラを着けてしまえば……
ダメだ!着けてしまって本末転倒だ。それでは逆転の発想というよりも、ただの開き直りに過ぎないじゃないか……
でも待てよ……今のアイデア、意外にいい線いってるンじゃないか?
そうだ!
ブラ以外の物を着けてしまいえばいいんだ!
そうすれば僕がブラを着けていないという事を、ハッキリとさりげなく世間に公表できるじゃないか!
これだぁ!
僕は明日、早速計画を実行に移して、皆にこう言ってやるつもりだ!
「皆聞いてくれ!僕は、ニップレスを着けているンだ!」
作品名:のーぶらじゃないとおもわれているかもしれない 作家名:或虎