あめだま
まだ小さかった私の前に出された小さな手。
あめだまがひとつ。
「あのね、あめだまってニコニコになれる魔法のモノなんだよ」
そう言って、私の手にあめだまをのせニコッと笑うと
「またね。」
と言って去っていった男の子。
私と同い年ぐらいかな…。
ねえ、なぜですか。
なぜ、あなたはあの時「またね。」と言ったのですか。
名前も知らない私に。
また会うことはないだろう、そんな私に。
「またね。」
それは、またいつか会えるという約束ですか。
その答えはいまもわからないまま。
私にニコニコの魔法をかけてくれたあなたのこともわからないまま。
小さな小さな私達。
小さな小さな出逢い。
小さな小さな想い。
小さな小さな手。
そのときのあめだまはあの日と同じの空色。
甘くて、しゅわっとはじける。
そんな味。