希望
「とりあえず、リビングへどうぞ」
キミは小さく頷いた。ボクだって滑稽なのはわかったけれど、きちんとした態度で接しなくてはと妙な緊張感に掌が汗ばんだ。
リビングに来ても、キミはいつも通りにラグの卓袱台のところには座らず、立ったままでいる。
どうしたのだろう? まさかキミの着ぐるみを被った別人なのではないだろうかと考えてしまうほど、この一ヶ月半ほどの間に何があったのだろうか。
「座って、あ…どうぞお座りください……って『ただいま』って帰って来たのにどうしたの?」もう、ボクは、耐え切れず、思ったままの言葉で話しかけた。
それでも キミは、変わらぬその態度を貫く。敷物に正座したキミの前にボクも座った。
キミは、持っていた包みをボクに差し出した。ひと目で菓子折りということはわかった。
「父からです。手紙を書いていたのですが、結局、私から伝えなさいということでこれだけ受け取ってください」
「なんだか、仰々しいね。まあ 頂きます。ありがとう」
キミは、何を話し出すのだろう。
僅かな沈黙も ボクには地球がひと回りほどに感じる。
なんて、些細な言葉も 平凡な行いも なんだか気になるのは、職業病なのだろうか。
仕事にも自信がついたのかなと有頂天になりそうだ。