猫のアパート
001
「おはようございます、大家さん」
「あら、田中さん。おはよう」
アパートの管理人であり、掃除好きのおばちゃんが、いつものように、掃除をしていた。
「ちょっと、田中さん?知ってる?301号室の紫さんのとこ、最近、猫の鳴き声がするのよ」
「でも、私、いい大家だから、なんだか言いづらくて・・。でね、私、この前みたのよ。猫を」
「どんな猫だったんですか?」
「たしか、白だったわ。後、首に青いリボンを巻きつけてたわ」
その言葉を聞いた瞬間、俺の胸の束縛が時離れた感覚だった。俺の足取りは会社ではなく、301号室へと向かっていた。
『ミケ・・・!ミケ!ミケええええ!』心の声は、口に飛び出す気持ちだった。ミケに会いたい。会ったら、俺の家に戻って来い!と言ってやろうと決めていた。もちろん、言葉が通じるわけではないのだが。
高鳴る鼓動を胸に抑えて、俺は、301号室のチャイムを鳴らした。