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D.o.A. ep.44~57

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まるでさえぎるかのようにジャックが声を上げ、皆が彼がしめすものを見やる。
するとその先には、相変わらず草木が生い茂っているが、丈の長い草に明らかにゆるく反り、何かが通った形跡があった。
アントニオ船長は、木の枝に引っかかっていた布切れを拾い上げて握りしめる。ネイアのバンダナだ。
「…間違いないです。お嬢連れてここ通ったんですよ」
「ああ、せやろな」
「無事でいてるとええですけど…」

茂る木々の隙間からのぞく空を見上げ、ジャックはネイアの身を案じる。

途端、ぼとりと顔の上に何かが落ちてきて、目の前が真っ暗になった。

「〜〜〜〜〜ッ!!??」
声にならない悲鳴を上げて、ジャックは全身に鳥肌を立たせた。
目をふさがれたまま闇雲に暴れだしたので、前方と後方の仲間が異常を察しざわめきだす。
落下物は細長い何かで、首をツツツ、と伸ばし、ジャックの顔面に巧みに巻きついていく。

「うわああん!なんなんこれえ!とって!とってええ!!」
「ジャック、落ち着きって…、ただの蛇やッ!」
「へ、へへへへへ、へびッ!!? 蛇はイヤやぁぁあ!!!堪忍してえええ」

錯乱しているジャックを仲間が取り押さえて宥め賺しつつ、ライルが巻きついているそれをほどこうと手をかけると、
こちらを睨みつつ舌をちろちろ出して威嚇音を立ててくる。
「おねがい、は、はよとってええ!」
数秒視線を交わしていると、ジャックが泣きそうに声を震わせはじめたので、力尽くで引っぺがそうとした。が、なかなか取れない。
「なにちんたらやってんねん……って、クソッ、な、なんや、なかなかとれんなッ」
もたもたしているライルに見かねた海賊の一人が、彼を押しのけて蛇をつかむ。
「いっだっ!!」
だみ声が上がった。噛みつかれたらしい。

「…なにやってんねん…ホンマ」

あきれたような半眼で、アントニオ船長が腕を組んで脱力する。
「いつまで遊んでんねや。力抜けてまうわ」
「いてて…けど船長、コイツなかなか根性あるんですよ」
「んなもん切ってまえばええやろーが」
言って、彼は腰の短剣を抜いた。その時だった。

―――どこか遠い場所で、獣が咆哮を放った。
「…、ソル…?」

にわかに辺りが騒がしくなる。がさがさと音を立てながら、四方六方から何かが迫りくるのを、肌で理解する。
一体ではないことは確かだ。視界が悪いせいで、どこまで近いのか距離を測りにくい。
不気味な森に加え、見えない何かへの恐怖心から、海賊たちがどよめきだす。

「…うろたえんな!!それでも百戦錬磨の海賊団か!しっかりせえ!!」

アントニオ船長の一喝に我にかえった彼らは、一斉に船長に視線を注ぎ、次の指示を仰ぐ。

「走れ!…ええか、絶対、一人ではぐれたらあかんで!!」







作品名:D.o.A. ep.44~57 作家名:har