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D.o.A. ep.44~57

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「ネイアさらって行きよったヤツが、レオンハート、ってか…」

気が動転していたが、なんとか要点を伝え終える。
アントニオ船長は眉間のしわを深くして聞いていた。
「宝石っちゅうんは、ガセやったってか?」
「確かにきれいな獣やったけど、宝石には見えんわな」
「…で? なんぞあれの恨みでも買うようなマネ、したんか?」
「ライルくんはそんなコトしとりません!」

ライルが否定するより先に、ジャックがさけんだ。
「初めて会った日、襲ってきたんです…俺は一ヶ月、無事やったのに」
「…ふうん。 ホンマに襲われるような理由、ないんやな?」

そこでライルは、なんとなく即答するのがためらわれた。
自分がある種の異端であるコトは、ついこのあいだ、賢者から説かれたばかりだ。
風の魔人たるアライヴが、ライルをなぜか選び、この身に宿っている。
ゆえにこの先、幾多の困難に襲われるであろうと。
その困難のひとつが、レオンハートであるとすれば、納得したくないけれど、理由として挙げられるのかもしれなかった。
しかし、この話になんらかかわりない、この一海賊へ、自分の身の上について話したところで、理解されるのか。
というより、ライル自身、自分のことをよく知らなさすぎる。
デッドおよびロウディアなどのクォードに狙われているのはわかったが、レオンハートなどここに来て初めて知った存在である。
なんと応えるべきが言いあぐね、何か言いかけては口を閉じるという、はっきりしない態度になってしまう。
豪快な性格であるアントニオ船長がいらだつのは当然であった。

「男ならはっきりせんかい!! あるならある、ないならない! どっちやねん!!?」
「は、はいぃ! し、知るかぎりのところでは、ないはずと思うであります!」
ドスの利いた怒声に、つい涙目ですくみあがった。
ロノアの兵隊の頃、ガラの悪い連中を相手にするコトは日常茶飯事だったのに、彼のがなり声だけは苦手らしい。
これがチンピラと大海賊という、小物と大物の差かと、背すじを正して恐れ入る。
「救出には、あんさんも手を貸してもらうが…ええな?」
「それは、最初から、そのつもりです」

ライルが深々とうなずくと、アントニオ船長はようやく、厳しい目を和らげた。
「いや、ビビらしてすまんな、堪忍堪忍。
俺にこんだけ怯えとるあんさんが、あんなバケモンの逆鱗つついたりするようなマネ、するはずないやんなあ」
「は、はは…」

苦笑いでかえす。
彼は腰を上げて各員に指示を出しはじめた。
それに従い、戦闘員の準備、さらわれたネイアの位置の割り出し、そのほか諸々の雑事をスムーズに終わらせていった。
これが、ともに万里の波濤をこえてきたチームワークなのだと、感心する。
レーダーの解析の結果、反応は島の中心にあることが判明した。
島の中心、それはもともと反応があった場所だったはずだ。
レオンハートがそこを根城にしているのだとしたら、もしかするとリノンもそこにとらわれているのかもしれない。
魔力の反応の有無は、生死の判断である。
その反応が彼女だとすれば、生きていると太鼓判を押されたにひとしい。
期待とそれをいさめる感情のせめぎあいに、ライルの胸は、逸った。


準備は滞りなく完了し、荷の担い手もその用意をすませている。
準備完了です、とアントニオ船長に報告がいくと、腰にさげたサーベルを引き抜き、陽に掲げた刀身をきらめかせた。

「―――ソル神の加護があらんことを!」

勇猛な海賊たちは雄々しくこぶしを振り上げ、彼の宣言を唱和する。
「ソル神」、そんな単語を、ジャックと再会した時にも言っていた。
彼らの故郷が信仰する神なのだろう。
もちろんライルは聞いたこともない。あらためて彼らを、遠い異国の人間なのだと実感する。
そういえば、ジャックも、レオンハートの名を「ソル」と呼んでいた。
なんとなく気になって、ジャックの姿を探すと、荷を背負った彼はどこか浮かない表情でたたずんでいた。

「……いくで。 このアントニオ=ネイラの娘に手ェ出したこと、後悔させたるわ」


作品名:D.o.A. ep.44~57 作家名:har