戻らない時間【詩集４】
時間
無くしてしまった懐かしい思い出
忘れてしまいたい古めかしい過去
思い出せないこと
思い出したくないこと
楽しかったこと
悲しかったこと
嬉しかったこと
辛かったこと
笑ったこと
泣いたこと
美しい思い出
薄汚れた過去
時間が経つと嫌なことは全部忘れて
楽しかったことだけが思い出に残るというけれど
本当だろうか？
思い出す遠い日々
幼い頃
多感だった十代の頃
初めて社会に出た時のこと
初めて人生の挫折を味わったこと
自分の足で歩くことを知り
やがて大人になっていく
時間はベルトコンベヤーのように止まることなく
否応なく先へ先へ誰も彼もを乗せて走っていく
できなかったことも
やり残したことも
見る間に遠くかすんでもう手が届かない
楽しかったはずの時間はかすんだ靄の向こう
幸せになるはずの人生は
猛スピードで駆け抜けて
既に終着駅が見え隠れしている
どこに行ってしまったのだろう
私の思い出
私の人生
大切な人たち
大切だった事々
はるか後方に薄汚れた影に閉ざされてもう何も見えない
今もそこに
遠い彼方にそれは生きているのだろうか？
誰にも見ることはできないけれど
作品名：戻らない時間【詩集４】 作家名：maki