戻らない時間【詩集4】
地下水
深く暗い地の底に
そは脈々と流れ行く
誰も知らぬ
遙か遠き奥津城に
そは隠れたるもの
目にすることを厭い
思い起こすことも疎み
遠ざけた
だが決して消えることなく
そこにあり続ける
有り余る辛酸の記憶
雪がれぬ恥辱
深き悲しみの記憶
煮えたぎる憎悪
深く堅い巌の下に閉じこめられた
負の遺産
闇の記憶
地下深き大地の奥で
わずかずつ
ほんのわずかずつ
それは磨かれ
清められる
やがて愛され
抱かれて
癒される
その日を待ちながら
作品名:戻らない時間【詩集4】 作家名:maki