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戻らない時間【詩集4】

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やりたいことができたんだ



やりたいことができたんだ
わかるかい?
ぼくにはやりたいことができたんだ

生きてても何にもいいことなんかないと思ってた
やりたいことなんか何もない
楽しいことなんか何ひとつないと思ってた
ぼくは何のためにうまれてきたのかって

朝も夜も昼間でも
ぼくには何の違いもなかった
明るいか
暗いか
それに何の意味がある?

毎日が同じことの繰り返し
食べて出して寝るだけ
毎日がその繰り返し

クリスマス、新年、夏休み
……だから何?

1学期、2学期、冬休み
……それに何の意味がある?

卒業したからってどうなるの?
合格したって何になる?

ぼくにはやりたいことは何もなかった
この退屈な人生という名の牢獄で
時計の振り子みたいに行ったり来たりして
終わりの日まで生きているだけ
それに何の意味がある?
ある種の拷問を受けるためにぼくは生まれてきたのかって

でも今は違う
ぼくにはやりたいことができたんだ

ぼくはやりたいことをやり
息をするようにとなりにいるきみを愛する
やがて家族も増えるかもしれない

ぼくはやりたいことをやり
ぼくは家族を守るために生きる

ぼくはきみを愛し
ぼくはぼくの人生を生きる
きみと共に

きのうまでモノクロームだった世界は
美しい色彩にいろどられる

灰色だった空は透き通った水色に
明るく輝くまぶしい太陽
緑の街路樹
透明にそよぐ風が優しくほおをなでる

木々が奏でるささやきが聞こえる
街ゆく人々のざわめき
森も山も谷も
家もビルも路地も電柱も地下鉄もぼくにおだやかに語りかける

気がついたかい?
これがほんとうの世界なんだよ、と

作品名:戻らない時間【詩集4】 作家名:maki