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夢現

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あの出会いは運命だった?

果して必然と偶然との違いは何なのだろう。


とりあえず。
そう……そもそも有り得ない出会い方をしたのだから、誰がどう呼ぼうと、私は”運命”だと乙女チックな答え方をしようと思う。

何せ誰も予想できないような事件に見舞われたのだから。



―――――時を超えるなんてそうそう起こり得るものではない筈だ。

人一人が国に管理され、行方不明なんてとになればマスコミが騒ぎ立てる、そんな現代。

まさか死のうとした人物が時を超えるなどと誰が思うだろうか……。

そんなの、夢物語でも今時ない。

でも実際超えた私は、此処に全ての記録を記そうと思う。



『残念だが、もって後三年だ。二十歳を迎えるのは難しいと認識して欲しい』

淡々と専門医に言われて、悲しみよりも私が感じたのはこの世との別れの喜びだった。
私が生きるには厳しい現実。

表向きに、私は資産家の娘と認識されている。
あくまでも表向きだ。

私は本妻の子供でもなければ、妾の子供で、この産まれついての病のせいで政略結婚の役にも立たない。
完全に邪魔者扱いを喰らい、唯一の理解者である母は先月この世を去った。

広い屋敷の離れ…。

母の為に父が建てたそれが、今の私の家で、私の唯一の拠り所だった。

過去形だ…。

一人の人間としての生活が出来ていたのは、母を愛する父が本妻から母を護っていたからだ。
母亡き今、私を護ってくれるものはなくなった。

本妻が嫌がらせをしに離れに毎日のように姿を現す。

時には殴り、時には蹴り、気性が荒い彼女は政略結婚によって愛情もなく無理矢理結婚を強いられたらしい。
彼女も被害者だ。

だが同情はできない。
自分を傷付ける存在である彼女に同情するほど、私はよくできた人間じゃない。

日々身体の傷は増えてく。

切り傷や火傷、打撲だったり足首なんて捻挫までしてる。

発作でも苦しみ、暴力に耐え、この先私の人生に光はあるのだろうか…。

死まで遅くても後三年。


もういい加減死んでも良いんじゃないだろうか?




作品名:夢現 作家名:kikai