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Parasite Resort 第一章

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 その構図は成立する?……いや……とてもでは無いが、旦には、戦いに参加する権利はなさそうだ。

 シュミハザの銀爪が数メートルも伸び、投球のモーションにも似た振りかぶりで、アザゼル目掛けて振り下ろされる。それを赤い拳で薙ぎ払い、仰け反るシュミハザの顔面を目掛けて、アザゼルが拳を見舞う。伸びやかな赤いストレートの光が、シュミハゼの頬の肉を掠め、小さな肉片を奪う。血とも付かぬ白い光を負傷した頬から滴らせ、シュミハザは不敵に笑うと両手をいっぱいに広げて、銀の爪☓10を最大限に押し広げて、胸の前で素早く交差させた。
 衝撃波なのであろうか、縦横無尽の銀の光が、シュミハザの爪から派生して闇に疾走り、逃れる余地を与えずアザゼルの体に交錯した。
 アザゼルの全身肌は、網目状に裂傷を負う。縦横無尽の傷口から、赤い血がただれる。アザゼル、肌は血のように赤いくせに、血は血に似ずマグマに似た色合いの光り輝く赤であった。たけ狂ったアザゼルの雄叫びが赤い光を増しまして闇一面に響き渡った。

 戦いが終る気配は無い……眼の前にある2つの光は、戦いを楽しんでいるようだった。

 旦は、考えた。

(戦い……俺の戦い……玲子……玲子を守ること……玲子……どこだ……)

 戦いを離れ、旦の意識は、闇の彼方へとその体を進める。振り返る価値も無い……あんな戦いに、旦は、そう思った。もう自分の体が誰のものになろうとも一向構わなかった。ただ気がかりなのは玲子の事、玲子の意識は、今どこにあるのだろうか?

「玲子ーーー、どこだーーー?」

 暗闇に吠えた。

 その声が闇を裂く、銀の光が見えた。

 それは橋だった。銀色の橋。いや……

 それは爪だった。きっとシュミハザの爪、旦の脳に突き刺さっているシュミハザの銀爪。

「これを渡っていけば……玲子の体に辿り着けるかも知れない」

 ――きっとそこに玲子はいるはず。

 旦の一念は、躊躇なく銀の橋爪に足を乗せた。ツルツルとして、危険。だがこの先に玲子がいるのならば……渡るしか無い。

「玲子……今行くよ」

 意識体の旦は、ズレた黒縁の眼鏡を押し上げて、遥か彼方に眼差しを送った。

 きっとそこに、恋人がいる。

作品名:Parasite Resort 第一章 作家名:或虎