Minimum Bout Act.03
No.11「敗北」
シンはセイラを取り戻す事が出来なかった。
男達は、シンの目の前で乗って来たであろう宇宙船に乗り込み、まるであざ笑うかの様に遥か上空へと飛び立ってしまった。
悔やんでいても仕方ない。
目の前で仲間が死ぬのなど、嫌というほど見てきたシンにとって、今一番やるべきことを瞬時に判断するのは雑作もない事だった。
ただ、感情を押し込めているだけであって悔しい、歯がゆい事に変わりはない。
近くの木を蹴り倒し、くるりと元来た方へと体を反転させた。
すぐにシンはカッツの元へ戻り、素早く止血をしてキャンプへとおぶって運んだ。
その途中、祈るような思いでルーズへ連絡を入れる。
ルーズはすぐに反応をした。
『今、地球から出て来る航行ルートにズレが生じたのを確認したわ。何かあったの?』
どうやら政府管轄のルートを細やかにチェックしていたらしい。
恐らくルーズが見つけたのは、先ほどシンが逃がした連中の宇宙船だろう。
重たいカッツの体を半ば引きずるようにジャングルを進みながら、シンはつい今しがた起きたばかりの出来事を事細かに説明した。
『セイラは捕まったのね? 殺されなかったって事は、利用価値があるからよ。きっと生きているわ。取りあえず昨日政府に話しを付けて、私も地球へ向かっているの。もうじき到着するから、通信を切らずに待ってて。医療道具も今回は揃えてきてるから』
「そうか……分かった」
そこでルーズとの通信を切ると、シンは大きく息を吐いた。
一体何故こんな事になってしまったのだろう。
地球に来て敵との戦いに巻き込まれ、セイラは拉致されカッツは瀕死の重傷を負ってしまった。
一体plainは何を企んでいる? 地球に危険をおかしてまで来て、こんなジャングルで何を探しているというのだ?
そこでシンは一度カッツを担ぎ直すと、一瞬頭に浮かんだ何かをもう一度探った。
探している?
そうだ、政府の調査団は地球の調査に来ている。だが、組織の連中は調査が目的などではないはずだ。
地球の状況を知りたいなら、調査を終えて戻ってきた政府のコンピューターをハッキングすれば簡単だ。
だとするなら、必ず目的の物がここブラジルにあるという事。
それが何か分かれば、もしかしたら組織に大ダメージを与える事が出来るかもしれない。
「う、う……」
作品名:Minimum Bout Act.03 作家名:迫タイラ