かさ
紙の傘でメルバをだました男の子は黒焦げになって、「こんなバッチはいらないよ。返す!」 と言ってメルバに銀のバッチを投げました。
「よかった。わたしの銀のバッチ戻ってきた! アベル、この傘女の子に貸してあげてもいい?」
「うん、いいよ。それならもう一つ傘を出すね。えい!」
アベルが魔法を唱えると新しい傘が出てきました。
「ありがとう! 必ず返すから」
女の子はアベルが出した傘を持って去っていきました。
そして二人は歩き出しました。すると今度はメルバに土の傘を渡した男の子が傘を持っていない女の子に話しかけています。
「あっ、今度はあの男の子だ!」
メルバはさっきと同じように傘を持っていない女の子にこの男の子は悪い奴だということを伝えました。
それを聞いて、土の傘をもった男の子は怒ってメルバに向かってきました。メルバは思わず目をつむり、体に強く力を入れました。
すると、突然メルバの目の前に落とし穴が現れて、こちらに走ってきた土の傘を渡した男の子は落とし穴に落ちてしまいました。
「わあーーーー!!」
男の子は穴に落ちて泥だらけになってしまいました。
「わあー、ごめんよお。助けてよぉ」
「あなたが悪いんでしょう。しばらくそこで頭をひやしなさい!」
メルバは強い言葉で穴の下の男の子に叫びました。
「アベル、この女の子にも傘を出してあげて」
アベルはえい!っと魔法を唱え新しい傘を女の子に渡してあげました。
「ありがとう! 必ず、返すから」
女の子はアベルの出した傘をもって去っていきました。
そして、ついにおばあちゃん家に着きました。アベルとはここでお別れです。
「アベル、ほんとうにありがとう! アベルがいなかったら、わたし、おばあちゃんの家までたどり着けなかった」
「よかったね。さあ、おばあちゃんにプレゼントを渡してきなよ。じゃあ、僕は自分の家に帰るね」
「また、わたしが困ったときは助けてくれる?」
「メルバが本当に困った時はそばに行くよ。でもね、メルバは自分一人でも立ち向かっていける。メルバにはもうその力があるんだよ」
「どういうこと?」
「……」アベルはその質問には答えずににっこり笑って去っていきました。
コンコン。そしてメルバはおばあちゃんの家のドアをノックしました。
「まあメルバ、元気だったかい? 来てくれてありがとうとっても嬉しいよ」
「おばあちゃん、誕生日おめでとう!」
「まあ、ありがとう。メルバ、ここまで来るのにとっても大変だっただろう。でも、今日一日でメルバは三つの心と大きな力を手に入れたんだよ」
「三つの心? 大きな力? それになんで、私が大変だったことがわかるの?」
「おばあちゃんはメルバのことは何でもわかるんだよ」
「えい!」
その時、メルバはアベルの小さな声を聞いたような気がしました。おばあちゃんはたんすの上の鏡を見てほほえみんでいます。そこには雷に打たれて黒こげになった男の子がもとどおりのきれいな格好で微笑み、落とし穴に落ちた男の子もきれいな格好になって、穴の外に出ている姿が写っていました。
「さあ、もういいからお入りなさい」
メルバはおばあちゃんの家に入るとすぐに疲れて眠ってしまいました。すると、すやすやと眠るメルバのおでこに一瞬、星形の模様が浮き出て光りました。そしてだんだん薄くなってその模様は見えなくなりました。
メルバは試験に合格したのです。