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人間と妖怪のお話し

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昔々人の里に下りてきては悪さばかりする妖怪の女がいました。
悪さばかりするので妖怪の女は里の人に嫌われていました。

ある日いつものように人の里に下りた女の妖怪は怪我をしてしまいました。

怪我をした妖怪の女は妖怪の姿のままではこのまま殺されてしまうかもしれない。そう思った女の妖怪は人間の姿に化けて人の里から離れようと考えました。

ところが妖怪の女の怪我は思ったよりも重症で人の里を離れる前に道に妖怪の女は倒れてしまいました。

そこへ一人の男が通りかかりました。
男は道に倒れている女の妖怪を見つけると急いで自分の家まで運び妖怪の女の怪我の手当てをしました。
男は医者だったのです。

女の妖怪の怪我はなかなか治らず、妖怪の女はしばらく人間の姿のまま医者の男の家に一緒に暮らすことになりました。

一緒に暮らしている間に医者の男と女の妖怪はとても仲良くなり、妖怪の女の怪我が治ってからも二人で会うようになっていきました。
そして自然とお互いを愛し合うようになりました。

二人はしばらくとても幸せな日々を過ごしました。


ところがある日医者の男が病で倒れてしまいました。
もともと医者の男はあまり体が丈夫ではありませんでした。
妖怪の女は一生懸命看病しました。
しかし、医者の男は日に日に弱っていきました。

男はもうすぐ自分が死ぬのだとわかっていました。
だから最後に妖怪の女にお願いをしました。

「死ぬ前に君の本当の姿を見せてくれないか?」と

医者の男は妖怪の女が妖怪であることを本当は知っていたのです。
妖怪でも女のことを愛していたのです。

妖怪の女は驚きましたが医者の男が望むならと自分の本当の姿を見せました。
妖怪の姿を見た医者の男は満足そうな顔をして
「人間の姿の君も素敵だけれど、本当の姿の君はもっと素敵だね」そう言いながら死んでしまいました。

医者の男が死んでしまい妖怪の女はひどく悲しくなりました。
悲しくて悲しくて泣き続けました。
そのう涙も枯れ果て泣くことも妖怪の女はできなくなりました。

妖怪の女は医者の男のことを愛し続けました。
何年も、何百年も。ただただ医者の男のことを愛し続けました。
そうしているうちに妖怪の女も年を取り、死んでしまいました。
死ぬ直前まで妖怪の女は医者の男のことを愛し続けていました。


そんな妖怪の女の姿を知っていた里の人たちは妖怪の女のお墓を医者の男の横に立ててあげることにしました。

里の人たちのおかげで、やっと二人はもう一度隣に並ぶことができたのです。
これで二人はまた幸せな日々を送ることができるでしょう。
作品名:人間と妖怪のお話し 作家名:吐息