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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 最終回

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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 最終回・大人の事情

 「ここが、君たちが遭難をしかけたという、語らいの丘か。
 なるほどねぇ。噂には聞いていたが、
 たしかに想像していた以上の絶景だな」

 「パパ。訂正してちょうだい。
 私たちは遭難しかけたのではなく、避難もしくは
 天候の回復を待って、ここで待機をしていただけのことです。
 うふふ。実際には霧の中に閉じ込められたままで、
 手も足も出せなかったわたしたちが助かったのは、たまが
 必死で山荘まで歩いてくれたおかげです。
 たまには心底、感謝をしています」

 「そうだねぇ。小さくても、男の子はやはり勇敢だ。
 それにしても、満開のヒメサユリは壮観だねぇ、
 おまけに、飯豊連山のすべての山がここから一望できるとはすごい場所だ。
 そう思うでしょう、小春さん。あなたも」


 『はい』と、離れた場所でたまと遊んでいた小春が振り返ります。
いそいそと傍らへ寄ってきた小春の腰へ手を回したパパが、
促すような仕草を見せます。
彼方を指差しながらいつのまにか、2人が小道に沿って歩き始めます。
2日間、嵐に翻弄をされたはずの草原とヒメサユリは、
何事もなかったかのように、見事に立ち直り、満開の景観を
4人の前に繰り広げています。



 満開のヒメサユリは、一帯の空気まで百合の香りに変えていきます。
薄いピンクのヒメサユリに混じり、色あざやかなオレンジ色の
ニッコウキスゲも負けじとばかりに、満開のときを迎えています。
ふわりと飛んできた白い蝶と戯れているたまを、背後から恭子が
ひょいと抱き上げます。


 『すっかりお世話になったわねぇ。お前には。
 お礼と言っちゃなんだが、お前が大好きな大人の女の匂いというやつを
 たっぷりと嗅がせてあげましょう。
 ほら。お前の大好きな、成熟した豊満なおっぱいの香りだよ。
 なんだい。そのつまんなそうな顔は。
 清子のペチャパイより、あたしの豊満なおっぱいの方がほうが
 よっぽどいいだろうに・・・・
 なんだかなぁ。つまんない子だねぇ、たまも。
 やっぱり、貧乳の清子の方がいいのかい、お前は』


 『うん』と嬉しそうにたまが、目を細めて頷きます。
『そうか。やっぱり清子のほうが大好きか、お前は。仕方がないわよねぇ。
あたしも清子は好きさ。可愛いしお茶目だし、性格が素直だもの。
でもさぁ・・・・
予定通りに会津を離れて、次のお姉さんのところへ修行に行っちゃうのが
少しばかり気に入らないよねぇ。
あたしと会津の盆踊りまでいると、あれほど約束をしたくせに、さ』


 ねぇぇと、たまを抱きかかえた恭子が、
語らいの丘からの景観に魅了されている、清子の背中へ近づいていきます。
『ほら。あんたのたまだ。あんたの懐が、やっぱりたまには最高なんだってさ』返すわよこんな愛想の無いやつ、と恭子が
たまを手渡します。


 「お姉ちゃん。盆踊りには、また必ず東山温泉へやってきます。
 予定通りに、次の姐さんのところへ行きますが
 会津でのことと、恭子お姉ちゃんのことは、絶対に一生涯忘れません。
 それに、もうあたしたちが世話なんかやかなくても、
 あの2人のことなら、きっと大丈夫です」


 「へぇぇ・・・なんであの2人の姿を見て、そんな風に思えるのさ。お前は。
 そんなふうに自信を持って言い切るからには、
 なにか根拠があるのかい?」


 「小春姉さんのお顔が、
 いままで見たことがないほど、美人です。
 きっと嬉しいことがあったのだと思います。
 でも、それ以上のことはわかりません。
 難しい大人の事情のことはわかりませんが、今日の小春姉さんは、
 私が今まで見たうちで、一番の、最高の美人です」


 「なるほどね。そういえば
 朝見たときからのパパの顔も、ずいぶんとご機嫌だった。
 そうか、そういう風になりはじめたのかしら・・・・
 うまくいくといいけどね。
 なにせ、大人の事情というものは難しくて、複雑だからねぇ」


 それにしても、嵐の痕跡を何一つ見せず、飯豊山は
朝から輝いていますねぇと、清子がもう一度緑がまばゆ映えている
飯豊連峰の山塊を見上げます。
清子の懐から顔を出したたまも、『うん、絶景だ』だが、それ以上によう、
やっぱりオイラは、ここが一番落ち着くぜと、ニンマリとして
笑っています。

(完)