連鎖(仮題)
下北沢で乗り換えのために電車を降り、ふと反対側のホームを見た。
そこには快速急行新百合ヶ丘行きに乗っている真樹の姿が・・・
真樹は俯き加減に扉にもたれかかり、絢子には気づいてないようだった。
アナウンス
~駆け込み乗車は・・・~
真樹はそのまま絢子の視界から消えていった。
絢子は携帯を取り出し、真樹にメールを送った。
一分も待たずに絢子の携帯が鳴った。
「私ももうすぐ着くよ^^v」という返事がすぐにきたので
さっきのは真樹に似ている人だと思い、渋谷へと向かうために
井の頭線のホームへ向かった。
・・・しかし真樹は時間を過ぎても現れなかった。
携帯に何度か掛けてみたが、どうやら電源を切っているようだった。
一時間を過ぎた頃、さすがにもう遊ぶ時間はないので絢子は帰ることにした。
絢子は真樹に腹を立てていたが、自分が帰った後に真樹がひょっこりきても
いけないので「もう帰るね」とだけメールを送った。
翌日、真樹が行方不明だと学校のHRで知らされた。
当日に遊ぶ約束をしていた絢子は学校と警察、真樹の両親にいろいろと
聞かれたが、絢子が知っているのは自分との約束をすっぽかして
「快速急行新百合ヶ丘行き」に乗っていたことだけである。
それが真樹本人だという確証は無いが、提供できる情報はそれくらいだ。
それから数日・・・依然として真樹の行方は分からないままだ。
新百合ヶ丘のホームに設置されてある監視カメラで、一度降りたことは
確認されてはいるが、それ以上の事は分かっていない。
駅員もそれらしい女の子は見ていないと言う。
そして一ヶ月が経とうとしていた頃、絢子は通学路で20m程離れた所に
真樹によく似た人を見つける。
近づけば近づくほど真樹にそっくりだった。
頬がこけて目の周りは窪みまるで骸骨の様ないでたちだったが、絢子には
それが真樹だと、はっきり分かった。
真樹は、近づいてきた絢子に何か言おうとして口を開けたが、
そのまま口を閉じ、裏路地へと入っていった。
絢子はすぐに追いかけたが、そこに真樹の姿は無かった。
真樹の両親に伝えようかとも思ったが、どうやって伝えるべきか
分からなかった。骸骨のような真樹が・・・とは言えない。それに、
路地に入った途端に消えた、なんて見間違いだと言われるに決まっている。
絢子はこのことを誰にも言わないことにした。
それからというもの・・・2~3日に1度の割合で骸骨の様な真樹が絢子の
前に現れては消えるということが続いた。
さすがにこうも頻繁に続いては気味が悪いので絢子は自分の両親に相談した。
両親は、友達を失ったショックで幻覚でも見ているのだと諭した。
しかし一ヶ月、二ヶ月経っても絢子の前には真樹が現れ続けた。
しだいに絢子の目からは生気が感じられなくなり、夜な夜な真樹が現れるという
通学路へと向かうようになった。
このままでは絢子がおかしくなってしまうと思った両親は、絢子を
精神科へと連れていった。
その時にはすでに焦点の合わない目できょろきょろと辺りを見回し、
呂律の回ってない口調で「真樹は・・・真樹は・・・」と繰り返すようになっていた。
絢子は医師の勧めで数日入院することになった。
その夜、絢子は病院の屋上から飛び降りて、死んだ。
屋上の扉はしっかりと施錠されていたはずだが、どうやってかは分からないが
開けられていた。
後日・・・病院内を徘徊する少女の姿が目撃される・・・