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進歩

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「あ、俺来週は実家に帰るから」


無造作に投げかけられた言葉に若干驚いて目を見開く。
後ろを向いててよかった。
顔を合わせて話していたら恐らく、多少なりとも疑問を抱かせてしまっていただろう。

そのままチラッとだけ振り返って「ふーん」と返事をした。



何の脈絡もなかっただけにかなり驚いた。
そりゃあ、以前実家に帰っていることを知らずに食事に誘ったとき見事に振られたので、予定くらいちゃんと教えとけよー?なんて、軽口を叩いたような気はする。

てっきり忘れてるだろうと思ってたのに。



何気ない語調で、なるべく何でもないような振りをして「週末に帰るんだなー、あ、お土産たのんだ」と笑ってみせる。
「嫌だ」と笑って返すぜんちゃんの表情が、なんとなーく、ホントになんとなーくホッと胸を撫で下ろしたように見えた。



もしかして、ちょっとだけ緊張していたのかもしれない。
俺の反応が気になって、でも伝えておかないと、と焦って切り出したのかもしれない。


たかが予定を伝えるだけの、ごく普通の当たり前のことだけど。





ちょっとだけ、でも確実に一歩、俺達は前に進めたのだろうか。

気のせいかな?でも気のせいじゃないといいな、なんて。








作品名:進歩 作家名:だんご