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目線

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じろーは話を聞くとき、滅多に目線を合わせない。

たとえば喫茶店で話しているとしたら、自分が話すときはこっちの目を見るのに、自分が聞く側になると途端に目線を外す。
机を濡らすコップの水滴を懸命にふき取ったり、ナプキンで折り紙をやり始めたり、スマホをおしぼりで磨いたり。
たまにちらっと目が合うが、基本的に目を合わせようとしない。

たぶんじろーは無意識のうちに目線を合わせないようにしているのだと思う。


自分が話し出すと、ちょっとだけ大袈裟な身振り手振りで話を伝えようと必死で、そして相手がちゃんと話を聞いているのか確認のため、目を見て話す。
だが、自分が聞く番になると途端に目が合わなくなる。
最初の頃は話を聞く気がないのかと腹が立っていたのだが、これは無意識のうちにやっている、ヤツなりの「一生懸命話を聞く姿勢」なのだ。

本人に確認したことはないので不確かではあるが、恐らく当たっているだろう。



相手の目を見ながら話を聞くと、恐らく話を聞いている途中でその「目が合った」状態に気付き、そのことが妙に気になりだし、話に集中できないのだと思う。
実際に何度か目が合った状態で話をしたとき、途中で目線が揺らぎ、返答もおぼつかなかったことを覚えている。

目を合わせて話を聞くことより、何かしら作業をしながら話を聞くほうが、ヤツにとっては話の状況がイメージしやすく話しに溶け込みやすいのだ。
そして自分の中でうまくイメージがつくと目を合わせ自分の考えを口にし始める。

このわかり辛い態度を見抜いて理解するまでに1年半もかかった。



わかりやすそうで実は人一倍わかりにくいヤツ。



本人すら気付いていないであろう、無意識の行為だと思う。
いつの間にかそんなものまでわかるようになってしまったことが、妙に嬉しくて、でも妙に癪で。

窓に薄っすら映った自分と目が合い、ふとこんなことを思ってみたり。


自分の考えすぎだったら笑えるな、なんて。






作品名:目線 作家名:だんご