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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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誘拐犯はただ沈黙する




誘拐犯、サイレント・キーパーの犯行のターゲットは全くもって予測不可能だ。
独居の老人、買い物帰りの主婦、学生の男、会社員の女、大学教授、孤児院の子供・・・・・・etc。
とにかく色々な職種、社会的立場の人間を何の前触れもなく拉致する。
ここで失踪ではなく拉致という言葉を使ったのはその人間が消失したと思われる現場にいつも例の落書きが残されていたからだ。
『SILENT KEEPER』
その謎の単語は警察で案件のコードネームとして使用されている。
サイレント・キーパーが関与していると考えられる事件では、今までに50人近い人間が消失してしまっている・・・・・・。
「短期間にこうも人間が消えちまっては、警察としても単なる失踪事件ってことで片付けられなくなったわけだ」
刃野は言った。
「最初は『これは警察への挑戦だ!』とかっつって本庁のお偉いさん方が特殊捜査班の人間を連れて捜査していたんだが、落書き以外全く手がかりなし。何人も拉致ってて、ここまで痕跡を消した誘拐犯なんて通常じゃありえないそうだ。んで、この超常犯罪捜査課の我々に依頼がまわって来たってわけだ」
刃野は肩をツボ押し器でぐりぐりし、お〜そこそこぉ、とか唸りながら緊張感なく説明する。
「落書き以外に何か事件の特徴は?」
フィリップはテーブルの上の写真に目を落としながら刃野に質問する。
「な〜んもねぇな。手がかりは正真正銘、その写真に写っている落書きだけだよ」
刃野は、HAHAHA−、と外人のように肩をすくめてみせる。
「まぁそんなこんなで無理難題をふっかけられて俺達も困っているわけさ。あっはっは〜、頼むよ翔太郎。こういう奇怪な事件は俺たち警察よりも上手くやれるだろう? 俺達を助けると思って捜査協力してくれよ〜」
相変わらず緊張感のない調子で刃野は捜査依頼をする。
「ダメ! ダメダメダメよ、ジンさん!」
しかしその依頼を照井亜樹子はきっぱりと拒否する。
「な!? どうしてだよ、アキちゃん!?」
予想だにしていない回答に刃野は驚く。
亜樹子は腕を組み、鼻息を荒くする。
「ジンさん、前回と前々回とその前の捜査依頼のお金、まだ払ってもらってないよね?」
「・・・・・・チ、覚えていたか」
「忘れるかーい! 前の依頼のお金が未納のまま、次の仕事をするわけにはいきません! 今回は諦めてください。てか、依頼金払ってください!」
亜樹子はピッと刃野を指差して言った。
それに刃野は何故か勝ち誇った顔になり、
「ふ、残念だったなアキちゃん。俺は宵越しの銭は持たねぇ。その日暮らしの貧乏人。逆さに振ってもチャリンと音のするものがなねぇのさ!」
「得意げに貧乏自慢すな! てかアキちゃんアキちゃん言うな! 自分で呼んでとは言ったけど、なんか聞いてて腹が立つ!」
「それにな、所長様がダメでもそこの従業員たちはすでにやる気モードになっちまっているみたいだぜ?」
「・・・・・・え?」
亜樹子が振り向くとフィリップは刃野の持ってきた写真に釘付けになっていた。
「フ、フィリップくん?」
亜樹子はおそるおそるフィリップに声を掛ける。
するとフィリップはバネ仕掛けのようにぐん、と起き上がる。
「神出鬼没の誘拐犯? 痕跡ゼロの完全犯罪? ・・・・・・いいね、ゾクゾクする。実に興味深い!」
その目はすでに"好奇心"という感情によって爛々と輝いていた。
「だ、駄目だ・・・・・・。完璧に興味持っちゃってるし・・・・・・。しょ、翔太郎くん、なんとかフィリップくんを止め、」
そこまで言いかけて亜樹子はぎょっと目を見開く。
翔太郎は何故かまた帽子を被りつばをいじりながら、また窓際で気取ったポーズを取っていた。
「あ、あれ? 翔太郎、くん?」
正直嫌な予感しかしない亜樹子。はたしてその直感は大当たりした。
「正体不明の連続誘拐犯、か。・・・・・・なんて、なんてハードボイルドな響きだ・・・・・・っ! これこそ男の仕事! もちろんだぜ、ジンさん! この街は俺の庭さ。この俺が必ず犯人の正体を突き止めてやるぜ!」
そこには少年のような純朴な目をした一人の半熟探偵の姿があった。
それに刃野は、うんうん、と満足そうに頷く。
「・・・・・・ダメだ、こいつら。早くなんとかしないと・・・・・・」
所長の亜樹子はただただ天を仰ぐばかりだった。