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相性

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『人間関係は相性がすべて。ひとも自分も責める必要はない』
なんて、何かの雑誌の記事で読んだような気がする。

確かにそのとき一理あるかも、と納得した。


だけど。





「・・・ねえ、いつまで待たせる気よ?」
「あ、ごめん!もうちょっとでここのダンジョンクリア出来そうなんだ」
「その台詞何回目だと思ってんの!」
「わあごめんって、あーーーーーっ!しまった油断した!なんてこった!!」


君が話しかけるから!と非難の声をあげる彼は、GAME OVERの文字と私の顔を交互に睨みつけている。
私はコンセントに刺さっているゲームのコードを引っこ抜いて叫んだ。


「デートの直前にゲームなんて始める馬鹿がどこにいんのよ!このお馬鹿!!!」






ひとも自分も責める必要はない?

自分の都合で約束を守らない人を責めずにどうしろっていうのよ。







付き合うことになったと友達に報告した途端、絶対合わないでしょ!と誰からも言われた。


私はいわゆる“ギャル”に属する人間。

流行りものと可愛いものとお洒落が大好きだし、友達だってたくさんいる。
遊び相手に困ったこともないし、毎日友達と馬鹿騒ぎして楽しく高校生活を送っている。


そんな私の恋人がいわゆる“オタク”に属する彼。

好きなものはゲームと漫画と二次元?というものらしい。
見た目なんて全く気にしないから、ぼさぼさ頭にだっさいメガネをかけて、教室では常にひとりだし皆からも大して好かれてない。



付き合うようになったきっかけなんて覚えてない。
いつの間にか話すようになって、いつの間にか一緒に過ごすようになって、いつの間にか好きになっていて。


一緒にいて妙に幸せで、妙に楽で、それって相性がいいってことでしょ?








「・・・だからって、これはないんじゃない・・・・・・・?」
「あの・・・お、怒ってる?」

当たり前でしょ!と吠える私に彼は落ち着いてと宥める素振りをしてみせる。
そんなことされたって怒りは収まらない。


「私との約束破るくらいそのゲームが大事なんでしょ!じゃあもうずーーーっとそのゲームしてればいいじゃない!死ぬまでやってればいいじゃない!!」
「いや、あの、そういうわけじゃなくて・・・・」


いっつもこう。
ゲームとか漫画とか、そっちばっか優先させて私のことは二の次。
こんなことで怒るのは子供っぽいかな、っていつも我慢してたけど、今日のことで怒りが爆発してしまった。

謝ったって許してやらないんだから。




もう帰る!なんて叫んで鞄を抱えて玄関まで走ろうとした。
その瞬間に手を捕まれて勢いよく引き戻される。
そのまま彼の腕の中にすっぽり収まる形で抱きしめられた。


「ごめん」
「なによ、私よりゲームのほうが大事なんでしょ?いっつもいっつも・・・私がどれだけ我慢したと思ってるの」
「うん、ごめん」
「ホントに悪いと思ってるの?反省してる?」
「うん」
「・・・今度やったらホントにホントに許さないんだからね、分かってるの?」
「うん、もうやらない」
「約束だからね」
「うん、約束」



私の言うことに小さく頷く彼の声が耳元で響く。
深く落ち着いたこの声を聞くと、募っていたいらいらがすっと消えていく。






結局こうやっていつも許しちゃう。

惚れた弱みってやつかな、適わないや。




「今回だけだからね」
「俺、ちゃんと君のこと好きだから。二次元も好きだけど君のこと好きだから」
「当たり前でしょ!!!」






今度やったらお気に入りのゲーム勝手に売り払ってやろう、なんて。






作品名:相性 作家名:だんご