中村さんの好きな時間
放課後に立ち寄る図書室が好きだ。
高村くんはいつも窓際の席に座り本を開く。
私はいつもその正面に座り、近くにある本を適当に開く。
本を読むのは嫌いじゃない、だけどどうしても目がいくのは正面に座る彼の手元。
手の甲が好きだ。
ほっそりして男の人にしては白く、わずかに血管が浮き出ている彼の手の甲が好きだ。
指先が好きだ。
本人と同じように、決して荒々しくはない、ゆったりと優雅に動く指先が好きだ。
爪が好きだ。
いつも綺麗に切りそろえられ、艶やかに光る彼の爪が好きだ。
でもやっぱり一番は、その手が見つめられるこの読書の時間。
作品名:中村さんの好きな時間 作家名:だんご