先生と女子生徒
勝ち誇ったような顔で先生は言った。 先生は27歳、私は18歳。その差は9歳。 私ははもうすぐこの学校からいなくなる。
「………います、けどそれがなんですか…?」
「どんなやつ?」
私の大好きな笑顔で聞いてくる。
「……先生、」
「ん?」
「先生だ、って言ったらどうしますか…?」
二人の間に沈黙が生まれる。
「……悪いけど、その気持ちには答えられないな。俺に は大事な人がいるから」
私の知らない真剣な顔の先生。 そんな顔私には向けたことない、そう思ったと同時に鼻 の奥がツンとした。
「冗談ですよ。大体先生を好きになるはずないじゃない ですが、煙草臭いし、ネクタイの柄はださいし、背は高 いけどそこまでかっこいいわけじゃないですし」
口早に言い放った私の声は震えてはいなかっただろう か。先生にこの気持ちがばれてしまったのではないだろうか。
「だよなーこんなおっさん」
ハハハと笑いながら先生が言った。
「先生は私が卒業したらすぐに私のことなんて忘れちゃ うんでしょうね」
私がそう言うと、先生は少し驚いたような顔をしてすぐ に、
「忘れないよ、今まで俺は教えた生徒の顔忘れたことな んてなかった教師ですよー」
俺の記憶力馬鹿にすんなよー、と笑いながら答えた。 その反応に私はポツリと「嘘つき」と呟いた。
その言葉ははたして私自身につぶやいたものか先生につぶやいたものかはわからない。