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距離

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さっきまで一緒にDVDを見て笑い合っていたというのに、じろーはいつの間にか静かに寝息を立てている。



最近よくコイツは寝るようになった。
というより、寝る姿を見せるようになったと思う。




一見能天気で楽観的のようで、コイツは人一倍神経質だ。


他人と一緒に旅行なんてしたら、絶対ほかの人が寝たのを確認してから最後に眠り、そして誰よりも早く目を覚ますタイプ。

一番最初に寝て最後に叩き起こされる自分とは大違い。




何も考えていないようで、周りの人のことは一番見ている。
決して他人を不快にさせないように、自分の振る舞いに規制をかける。

こういうことが自然に出来るヤツ。







寝息を立てているじろーは寒いのかもぞもぞと動いている。
立ち上がって布団をかけてやった。


それでもさっぱり起きない。

既に夢の中なのだろうか、妙な笑みまで浮かべて寝入っている。









最近コイツの笑みの種類が豊富なことに気付いた。

いや、元から終始人のよさそうな笑みを浮かべ、初対面の人間からも悪い印象は受けない人間だとは思っていたが、それとはもっと別の、素の表情があるらしい。



本当に嬉しいことがあったときのにやけた顔。
照れたとき恥ずかしそうに、でも気付かれないように目をそらして笑う顔。
怒ったときに一瞬だけ固まり、すぐ何もなかったかのように笑う顔。



どれも気をつけて見ていなければわからなかった表情たち。





一見すぐ顔に感情を表しそうなヤツなのに、実は感情を隠すのがうまい。

何か嫌なことがあっても、周囲を絶対に不快にさせないための手段。


それがコイツの笑顔。




どんな感情もすぐ顔に出し言動に表れる自分とは正反対。






自分が気付くようになったのか、それともコイツが隠していた感情の僅かな鱗片を見せてくれるようになったのか。


いずれにせよ、少しだけ距離が近くなったことには変わりない。

俺たちはこうやって少しずつゆっくりと自分達のペースで進んでいけたら、それはそれで。




作品名:距離 作家名:だんご