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飛鳥川 葵
飛鳥川 葵
novelistID. 31338
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ゲイカクテル エピローグ ~I FEEL FINE~

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各警察の捜査が進展して、膨大な送検書類を作成する段階に入った。刑事は毎日遅い時間まで書類を作成していたので、皆頭が痛かった。それでも作らなければ裁判にはかけられないので何とかしてこなした。人物名と罪状が一致しているかもチェックしなければならない。間違ったら大事だ。
 それらが終わった頃、ロンはデービス刑事とアレックス、ビリーを誘ってディータに吞みに行った。店に入るとカウンター席には一人しかいなかった。しかもそれはロゴスだった。四人は驚いたが、ロゴスが四人に気付いてカウンター席に座れと言うので、お邪魔させてもらった。ロゴスはワイルドターキーを呑んでいた。
「ここはオレが払う。四人共好きなように呑んでくれ」
「いや、今日はオレが出そうと思って三人を連れてきたんで、それはいいですよ」
「ロン、堅いコト言うな。オレが出すって言ってるんだから、構わず吞め」
「でも悪いですよ」
「お前、オレの顔に泥を塗るつもりか」
「いいえ。そんなつもりは……。分かりました。御馳走になります」
 四人はジャック・ダニエルを三つとジンジャーエールをマスターのボギーに頼んだ。ボギーは伝票をロゴスにまとめて付けた。飲み物が出てくると五人は乾杯をした。
「アレックスとビリーはよくやってくれた。感謝する。オレのシマであんなコトが起こるとは思いもしなかった」
「確かに。でも今回頑張ったのはビリーだよ」
「そうなのか。すげぇじゃないか」
「そうでもありません。今回は情報戦だったので、たまたま私だっただけです」
「私はムニョスの依頼でポランスキーを殺しただけだしな」
「そんなコトをムニョスさんに頼まれたのか。あのお方も無茶をするお人だぜ」
「それには警察も踊らされたしな」
「その節はすまなかった」
「バウンティー・ハンター登録証の写真を見た時、僕もびっくりしましたよ」
「ミニッツ・サンダースのコトか」
「ロゴスは知ってるんだな」
「あぁ。オレと親衛隊の四人組にガイは知ってる」
「そうなんだ。オーランド郡じゃ有名なんだってな」
「まぁな。オーランド紛争の英雄って言われてるぐらいだからな」
「それは言い過ぎ」
「凄いですね、ウィンタースさん」
「だからぁ、それは周りがそう思い込んでるだけだって」
「でもそうじゃなきゃ、オーランド紛争後に大佐になんかなれんだろうが」
「ロゴスまで。たまたま戦況がそうだっただけだって」
 アレックスはジャック・ダニエルを一気に吞み干した。グラスをボギーに差し出すとまた注いでくれた。
「そういや、リチャードはどうなったんだ」
「ガイが正当防衛で不起訴にした」
「そうか。よかったな」
 ロゴスもグラスを差し出す。ボギーがワイルドターキーを注ぐ。ロンもデービス刑事もグラスを差し出し、ボギーがジャック・ダニエルを注ぐ。ビリーはジンジャーエールをマイペースで飲んでいた。五人は色々な話をした。仕事のコト、恋愛のコト、恋人のコト、金のコト、愚痴など、話題は尽きなかった。
「そういやごめんな、ビリー。クリスが変なコトやっちまって」
「いいですよ、もう。今は元気ですし」
「あいつ時々ポカやるんだよ」
「ビリー、まだクリスと付き合ってんのか」
「はい、ロゴスさん。もう五年になります」
「結婚はしないのか」
「私、バイオロイドですから、ちょっと考えてしまいます。プロポーズされれば嬉しいですけど」
 ロゴスは男の世界に住んでいるのに、ゲイには理解があった。だが何故かゲイストリートは管轄外だ。どうしてそうなったのかは余り知られていないが、昔ロゴスが歓楽街を取り仕切る前は、アレックスとビリーにロンの家主、レーマンのものだった。歓楽街を巡って論争をした時、当時はゲイは認められていなかったので、ロゴスはレインボー・ストリートを取った。そしてゲイストリートはレーマンのもののままになったのだ。今、レーマンの後継者を探しているところだ。もしかしたらロゴスが引き継ぐかもしれない。
 五人の話は続いた。事件も片付いたので、完全に打ち上げ状態だった。しかもロゴスのおごりだ。四人は遠慮なく飲んだ。ロゴスも最初はマイペースだったのに、四人というかビリー以外の三人のピッチにのまれ、杯を重ねていった。もう最後の方は滅茶苦茶だった。ビリーとデービス刑事は飲み物は変わらなかったが、他の三人はスピリタスをストレートで一気吞み競争をしていた。これは閉店コースだなとビリーは思った。デービス刑事は船を漕ぎだした。帰りはどうするのだろうとビリーはふと心配になった。三人は相変わらず愚痴をこぼしながらスピリタスを呑んでいる。ロゴスがそんななので、他の客であるガンマン達は居心地が悪くて、早々に帰る者もいた。残ったのは酔っ払いだけだった。
 閉店間際の朝六時前、三人は最後のスピリタスを頼むと、乾杯しようとロンが言い出した。ロンは寝ていたデービス刑事を叩き起こした。
「何をするんですか、カーター刑事」
「だから乾杯だよ、乾杯」
「なんのですか」
「いいから早くグラス持て。なんだよ。一口しか残ってねぇじゃねぇか。まぁいいや、それで。持て持て」
 五人はグラスを持って立ち上がった。デービス刑事はふらついていた。五人がグラスを掲げるとロンが仕切った。
「ゲイカクテル、さよならっ!! 仕事、万歳っ!! 酒、万歳っ!! 乾杯!!」
五人共「おう」と答えて一気に吞み干した。そして会計を済ませると、四人はロゴスに「ごちそうさま」と言って別れた。
 デービス刑事はロンの部屋に泊まるコトになった。四人は蛇腹格子のエレベーターに乗り、三階でロンとデービス刑事が降り、五階でアレックスとビリーが降りた。アレックスは風呂に入り、ビリーはいつも通りに体を洗った。今日は昼に起きるコトにしようと二人は思った。ビリーはまた良い日が続くコトを祈って睡眠モードに入った。アレックスは風呂から出ると、髪が乾くまでの間、リビングでジャック・ダニエルを吞んだ。吞みだすと、とことんまで吞むのがアレックスだった。三十分後、髪が乾いたのを確認するとグラスの残りを吞み干した。ジャック・ダニエルのボトルを棚に戻し、グラスを洗って軽く拭き、水切りカゴに入れた。
 アレックスも寝るコトにした。平穏無事な日々が続くコトを祈って眠った。たまには大きなヤマも下さい、と余計なコトも付け加えて。