小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
おやまのポンポコリン
おやまのポンポコリン
novelistID. 129
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

つきもの

INDEX|1ページ/1ページ|

 
【 つきもの 】

「姉さんちょっとこれを見て欲しいんだけど」
 突然、我が家にやって来た妹がただならない表情で切り出した。

 彼女がバッグから取り出したのは、先日の法要で親族が集まって撮った一枚の写真。
「ここよ。何が見える?」
 そう言いながら震える手で、写真に写る私の肩を指した。

 肩の上にいたのは人ではない物体!
 耳といい牙といい、それはまさしく猫の姿だった。

「あら、ナ〜ムだわ」
 私はクスリと笑いながら写真に写ったナ〜ムをなでた。

「姉さん、冗談じゃないわよ。ナ〜ムは5年前に死んだ猫よ。それがどうして姉さんの肩の上に乗っかってるのよ」
「さあ、久しぶりにみんなの顔を見たくなったんじゃないかしら。あなたも茂樹も、小さい頃はよくナ〜ムと遊んでいたでしょう」
 私は深刻そうな妹をはぐらかせた。

 実は子供の頃から霊感が強かった私には、ナ〜ムの霊がいる事はすでにわかっていた。
 と、いうより私にはナ〜ムが見えていたのだった。


 ナ〜ムは人懐っこい雄のキジトラで、私がまだ中学の頃に拾ってきた猫だ。
 お母さんからは「元の場所に戻して来なさい!」と叱られたが、妹や小さかった弟の茂樹が大泣きして抵抗し、ついに我が家の一員となった。
 以来16年、ナ〜ムは家族の誰からも愛され、私が結婚して家を出る前年に虹の橋を渡った。
 そんなナ〜ムが未だに私の肩に乗っていても、恐れることなどなかったのだ。

 だが妹はそうは思わなかった。

「この写真を見ても驚かないのね」
「だってナ〜ムだもの」

「やはりね。祥雲導師のお言葉のとおりだわ」
 直美はそう言うと、ポケットから携帯を取り出した。
「ちょっと、どこに電話するつもり?」

「霊媒師の祥雲導師にお祓いを頼むのよ」
「変な宗教に入ったのね。そんな必要は無いから止めなさい!」

 押し問答になった。

 生まれつき霊感のない妹は知らないが、霊には憑いても害のないものとあるものがある。いわゆる守護霊は害のない霊の代表格だが、昇華した動物霊もまたそれに準ずるものなのだ。
 それどころか、彼らは人の体に這い寄ろうとする他の動物霊から守ってくれている。

 例えば近年の研究で皮膚に付いている細菌は他の有害な細菌から体を守っていることがわかってきたが、そのようなものだ。

「ナ〜ムがいつまでも離れないと姉さんに霊障が出るのよ!」
 直美はなおも言い張ったが、私はきっぱり断った。

 そんな妹の頭の上には、彼女が去年まで飼っていたトイプードルのポコたんが乗っかっている。
 言えば怖がるから言わないが、夭折したポコたんがちゃんと彼女を守ってくれていたのだ。

 私達にはこうして守ってくれる動物霊がいるが、そういう存在がいない人はどうだろう?
 その顕著な例とも言える人が数日後に現れた。

 どうしても諦めきれない妹が祥雲とかいう霊媒師に話したようで・・・、
 祥雲は自ら来なかったものの、その弟子を送り込んで来たのだ。

「ご忠告申し上げますが、貴方は危険な状態にありまっちゅ。導師の元に足を運ばれるのが嫌なら、私が除霊して差し上げまっちゅ。修行中の身なれば費用も割引中。本日中に貴方を解放してさしあげまっちゅ」
 
 やたら“チュウ”に力の入る人だなと思ったら体中にネズミの霊が取り付いていた。
 私が即刻断ったことは言うまでもない。


    ( おしまい )



  この物語はフィクションです。登場人物やペットの名前も実在のものではありません。
作品名:つきもの 作家名:おやまのポンポコリン