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序章　転校生
　ここはとある田舎町、八百万（ヤオヨロズ）町。人口は少なく、これといって特産物などもない町だ。その町にある、唯一の高等学校の、二年三組の教室。まだ朝のホームルームは始まっていない。そんな中で、茶髪の少年がバンダナを巻いた黒髪の男子生徒に話しかけている。
「おい、聞いたか？今日、転校生が来るんだってよ！」
「あん？んなことでイチイチ騒ぐなよ。ガキじゃあるまいし……」
　話しかけられた男子生徒は、呆れた表情で言う。対して、茶髪の少年は満面の笑顔だ。誰が見ても上機嫌なことがわかる。
「だってよ、転校生は超美少女らしいぜ！これで騒がずにいられるか！？いや、男なら騒がずにはいられないはずだ！！」
　茶髪の少年は熱弁を奮うが、黒髪の少年の目は欠伸をしている。すでに聞く気はいないようだ。
「お前は女のことになると相変わらずテンション高いな、翔」
「お前は相変わらずテンション低いな、護。たまには俺の話にも付き合えよ」
「お前と女絡みの話は絶対にしねえよ。面倒臭えからな」
　言い終わると、二人は短く笑った。
　黒髪の少年、名は『神野護（ジンノマモル）』。少々荒い言葉遣いと、頭に巻いたバンダナがトレードマークだ。やや目付きが悪いせいか、近寄りがたい雰囲気を醸し出している。
　茶髪の少年はの方の名は、『天田翔（アマダショウ）』。陽気な雰囲気と気さくな性格から、とても親しみやすい。いわゆるクラスの中心人物である。基本的に表情は緩んでいるので、常に人懐っこい顔をしているとも言える。
　彼らは幼馴染であり、幼少の頃からの付き合いだ。なので、女好きな翔と女性関係の話をすると、とても面倒なことになるのはわかっている。故に護は翔との会話は女性の話題は挙げない、またはスルーすることにしているのだ。
「……お、予鈴」
　どこの学校でもよく聞く、ありふれたチャイムの音が鳴る。翔も大人しく席に着き、ホームルームの始まり――もとい、転入生が来るのを待っている。
「おう、全員いるか？」
　教室の扉が開き、中年男性の担任教師が入ってくる。
「もう皆知っていると思うが、転校生が今日よりこのクラスの一員になる。……さあ、入りなさい」
　担任教師に促され、転校生が教室に入ってくる。