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喧嘩

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…喧嘩した。
有り体に言えば、そうだ。

私は、ガランとした部屋に一人うずくまる。
体育座りで、一人。
外はうっすらと暗くなりはじめてきた。
でも、電気をつける気にもならない。

「バカ…」
ぽつん、と呟いたら、
膝の上に水滴が落ちた。
こんなハズじゃなかった。
こんなハズじゃ…


事の発端。
昨日のことだった。
でも、前々からの小さい事の積み重ねもあったのかもしれない。

私は、いつものように仕事から家に帰り、
彼の帰りを待ちながら夕食の支度をしていた。
最初は、食事は当番制、と決めていたことだったが、
彼の方が帰りが遅く、
今では私がほとんど食事の準備をしていた。
でも、それは嬉しいこと。
だって、彼の為に料理ができるんだから。
小さな小競り合いが多い私たちだったけど、
上手くやっていると思ってた。
…少なくとも、私は。

ガチャガチャ、と鍵を開ける音がする。
「ただいま」
と、彼は疲れた顔でドサリ、とカバンを置く。
「あ、お帰りなさい。ゴハンすぐできるから。」
「ああ」
「それとも、お風呂にする?それとも、わ・た・し?」
「あのなぁ…ww新婚さんじゃあるまいし…つか結婚もまだだし…疲れてんの、俺は。」
「え~?じゃあ、いつ結婚してくれるの?」
「そのうちな、そのうち。」
彼は手をヒラヒラさせながら自室へ行く。
…いつもこんなだ。
ハッキリしない彼の態度。私は、モヤモヤしたものを心の中に抱えながら料理を再開する。


「…ごっそーさん。」
彼はぶっきらぼうにそう言い、箸を置いた。
「ねぇ、美味しかった?」
「…あー?うん」
すでに、彼は横になってテレビを見ている。
「…ねぇ」
「…あー?」
「食器の片付けは、貴方だったはずよね?」
「…うっせーなー、仕事で疲れてんだよ」
「はぁ!?私だって仕事してんだけど!」
「どーせ、暇な仕事だろ?ニコニコ笑ってりゃいんだから」
…暇?そんなことはない。
気も使うし、それなりに立ち回ることだって必要だ。
何より、私はこの仕事が好き…!

「…るさない…」
「…なんか言った?」
「許さないって言ってんのよっ!!」
バンッ!
と机を叩いて立ち上がる。
流石に、彼も私の方を振り返り、目を丸くして私を見上げた。

「もうやってらんない!私ばっかり…!私だって疲れてるんだから!」
「はぁ?何言ってんだか。俺の方が疲れてるし。」
「だいたい、貴方は私の仕事認めてくれないじゃない!」
「あぁ?売れないモデルなんてやめちまえよ」
「ひどい!私がどんなにこの仕事が好きか…」
「俺は嫌なんだよ!!」
今度は、彼がバンッと机を叩く。
「んな、水商売みたいな仕事、長く勤まるわけねーじゃねーか!しかも水着とか人目にさらしやがって…」
「いいじゃない!私がやりたいって言ってんだからっ!」

至近距離で睨み合い、ケンケンガクガク。

終いには、私も彼も何が言いたいのか、わからなくなっていた。


「…もういい!」
ガタッと彼が立ち上がる。
「お前はもう、好きにしろ。俺は出ていく!」
「ええ、そうするわ!出ていってちょうだい!」
彼は自室でガサゴソと荷物をまとめ、
こちらを振り返ることもなく、部屋を出ていった。

…部屋には、テレビから流れる笑い声が虚しく響き渡る。

「…なんで…」
こうなっちゃったの、と
私は途方に暮れていた。




どのくらい、うずくまっていただろうか。
もしかしたら眠っていたのかもしれない。
パチリ、と音がして
急に部屋の電気がついた。
ふっ、と私は泣き腫らした顔をあげる。

そこには、
彼が、いた。

「なんて顔だ。仕事にならねぇぜ?」
皮肉っぽく笑う彼。
「…誰の、せいよ。」
私はそっぽを向いて答える。
「…謝って済むなら良いけど、済まないだろ?だったら謝るの悔しいじゃんか」
彼はそう言って、ぞんざいに荷物を放ってよこす。

そして、その上に、ぽん、と小さな箱も。

「…何?」
「…開けろよ」
彼はぶっきらぼうに言う。
そこには…
ダイヤモンドの指輪があった。

「深愛」
彼は、真剣な面持ちで、私の名を呼んだ。

「俺と…結婚してくれ」



そして、私は今、彼の隣にいる。
教会の神父の前で。

「誓いのキスを」
神父のおごそかな声と共に、ベールがめくられる。

そう。
これからも沢山喧嘩はするかもしれない。
だけど一生この人と…
この人と一緒にいたい。
そう思いをこめて、
私たちは唇を重ねた。



END

2012.2.27












































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答え:診断メーカーが放った台詞↓

「…謝って済むなら良いけど、済まないだろ?だったら謝るの悔しいじゃんか」
彼はそう言って、ぞんざいに荷物を放ってよこす。
作品名:喧嘩 作家名:碧風 -aoka-