桜の木の下には…
そんな話を聞いたのはどこだっただろうか。
よくある、都市伝説の一つ。
「桜はね、その死体の血を吸うから、こんなにはかなげで綺麗なピンク色をしているの」
遠くて近い昔、そんなことをお前が言っていた。
ひらり…
と、桜の花びらが散り、俺の手の平の中に落ちる。
まるで
「私を忘れないで」
と言っているかのように。
俺は、河原に寝そべっていた身体を起こし、
桜を仰ぎ見た。
ああ…お前は、生きているのだな。
姿を変え、物言わぬ姿になっても。
こうして俺が会いに来れば応えてくれる。
俺が、この手でお前を斬り、
お前が俺のものになり、
俺だけの桜になっても。
お前は、生きつづけている。
俺を恨むことなく、綺麗に毎年、花を咲かせている。
愛おしい。
もう、一生離さない。
お前は、俺だけのために、
いつまでも花を咲かせていておくれ…
END
2012.2.24