小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

運ぶのもと言えば

INDEX|1ページ/6ページ|

次のページ
 
 出稼ぎ労働者というのは悲しい身分だ。
 仕事といえば肉体労働とか根気がものをいう単純作業とかいう辛くてだるくて面白みのないものばかりだし、大変な割に給料はよろしくない。しかも雇用期間は短くて不安定。そもそもよその国から来た(雇う方にとっては)得体の知れない人間でもつけるような仕事だ。長期に渡る安定した雇用も、人並みかそれ以上の給料も、昇進して重役につくということも叶うはずがないわけだ。
 それに出稼ぎ労働者の身で稼げる仕事に就こうと思うなら、学業なり技術なり、それ相応に秀でたところがなければならない。しかしながら、特技といえば――出稼ぎ労働歴も長いのでちょっとしたことなら色々出来るのだが――東の故国で身につけた格闘技ぐらい。それで培った体力はともかく、格闘技が仕事の役に立つはずがないわけで・・・・・要するに、高い給料をもらえる仕事につける技能も知識も俺にはないのだった。
 そんなわけで、今日も俺、ジューク=ウエスターは仕事に精を出す。日雇いだろうと重労働だろうと、今日のおまんまのために文句を言ってはいられない。
「でも、これはキツイです・・・・」
 物陰にうずくまり、俺は荒い息を必死で整える。見つかったらヤバい。疲労困憊かつ慣れない場所なのにこれ以上働かされてたまるか。
「来るなよ〜頼むから来るな〜」
 物陰で俺は奴らに見つからないことを必死で祈る。見つかったら殺されるかもしれない。まったく割に合わない仕事だ。
 そういえば仕事仲間であるリュスは大丈夫だろうか。俺より要領の良いあいつのことだからうまく逃げているだろうとは思うが、あいつをこの仕事に無理やり付き合わせたのは俺だ。何かあったら俺の責任だ。
「いたぞ!」
 ちっ、見つかった! 俺は覚悟を決めて物陰から飛び出した。その直後、俺が隠れていた木箱に無数の穴が開く。鳴り響く銃声。飛び交う弾丸。それを避けて、俺は走る。
「うおぉぉぉおぉぉぉ! 仕事を完遂するまで死んでたまるか―――!」
 いやうそごめんなさい。仕事が完遂した後も死にたくないです。
作品名:運ぶのもと言えば 作家名:紫苑