回転
2
最近殿がおかしいのです。
確かに一夫多妻が許される時代かもしれません。
しかし…
いつも週に一回は必ず来て下さっていたのに…
もうかれこれ三週間待ち続けております。
「殿はどうしたのかしら」
「あら、奥様はご存知ありませんか?かぐや様のお噂」
かぐ…や…?
(なんでも、竹取様の一人娘で、それはそれはたいそう美しい姫君だそうですよ。国中の殿方が恋こがれているそうで…)
あの方も…!
「…」
「こちらを向いておくれ」
「…随分久しゅうございますね」
「…すまなかった…」
「それで、お噂の姫君はどちらに?」
「…わたしがおかしかったのだ…あの女は…確かに美しかった。この世のものではないかのように。…いや、本当にこの世のものではなかったのだろうな…」
殿があまりにも静かにぽつりと溜め息をついたものだから、ついそっとよりそってしまう。
「のぅ…」
殿がわたしの髪をさらさらとときほぐす。
「今宵は綺麗な月よのう」