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アパートにて

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みなさんは、生命保険の外交員の仕事の現場をご存知だろうか?


今日は、私が某生命保険会社で勤務していた時のことを書こうと思う。

どのようなイメージをもたれているか、気になるところではあるし、
余計な誤解を生むのでは、という懸念もけれど、、、。


もともと大卒の勤務する部署に配属されたが
諸事情で各地域の家を訪問する部署に転属することになった私に、
40代後半の先輩社員のYさんがトレーニング代わりに
同行してくれることになった。

そんな中、私とYさんは、ある安アパートにたどり着いた。
どの街にもよくありそうなちょっと古ぼけた3階建てのアパート。

その、集合郵便受けの前で服部さんが立ち止まった。
ガサゴソとその郵便受けに手を突っ込みだす。

「この部屋には人が住んでいないねえ、、、」
この人は、探偵か、泥棒か、、、!?
と思わず言いたくなるのをぐっと我慢する。

そして、Yさんはその建物の3Fから訪問するように私に指示を出した。
「声は上から下にもれるから上から行くといいんだよ」
はあ、そうですか、、、。私はなんちゅう世界に飛び込んでしまった、と思った。

ピンポーン、と押すが誰も出てこない。
1Fの角の部屋でようやく人が出て来た。
「生命保険はもうやっているからいいよ」
と言われたけれど、雑談して電話番号を教えてもらえないか聞いた。
すぐに入ってもらえなくても生命保険会社は、まずは情報集めをするものだ。

「携帯電話なくして友達の連絡先がわからなくなった!
 まあ、友達削減できていいけど、、、」
友達削減、ですか。豪快なことをいうなあ、この人、、、。

その人が生命保険に加入してくれる日は、結局なかったのは言うまでもない。

ちなみに私は、当時は保険の世界から脱落してしまったが、実はもう一回トライしてもよいと思っている。
成功すると予約で一杯になるらしい。成功するのが大変なんだけどね。


作品名:アパートにて 作家名:味岡 薫