Tadの「なんちゃって留学記」 2008.6.29~7.14
Diploma
バンクーバー滞在中、一度だけ小雨がぱらついた以外はずっと天気に恵まれた。
Tadの授業最終日である2008年7月11日も空は雲ひとつない快晴だ。
この日の授業は午前中で終わり、午後は近くの公園でスポーツデーというイベントがあるらしい。
本来教室で行われる修了証の授与式も、どうやらこのイベントの中で行われるようだ。
徒歩で移動したその公園は、海の向こうにダウンタウンの高層ビルを臨む美しい公園だ。
ランチを終え、クラスメイトとおしゃべりをしたりボール遊びをしたり、
それぞれが思い思いに時間を過ごしたあと、いよいよ修了証の授与式となる。
この日に修了する学生はTadのほかにも5、6名いた。
担任から修了者の名前が呼ばれるたびに、他の学生からやんややんやの大喝采が起こる。
「俺のときシ〜ンとしたらどうしよう」
急に不安になるTadだったがそれは杞憂に終わった。
Tadの名前が呼ばれると何の面識もない学生たちが、大声援を送ってくれる。
その中にはあのドイツ娘Juliaの顔もあった。
「なんていい奴ら…」
久しぶりに感極まるTadであった。
担任のIdaは修了証を授与したあと、
Congratulations!!と叫びながら、Tadにハグしてくる。
「おいおい、胸が当たってるよ!」
でも、積極的に離れようとはしないTad。
教師を定年退職した同期のご婦人とも久しぶりに対面する。
初めて会ったときのあの心細そうな表情は消え、すっかり他のクラスメイトと馴染んでいる。
1年間の滞在と聞いていたが、これなら何も心配することはない。
婦人:「友達になってくれてありがとう」
T: 「こちらこそ、どうぞお元気で。またいつかお会いしましょう」
別れの挨拶を終えたTadはもう一度学校に戻り、妻に最後のメールを打つ。
「最後の授業が終わり、今修了証を授与されました。友達…できたよ。」
作品名:Tadの「なんちゃって留学記」 2008.6.29~7.14 作家名:タマ与太郎